パナマ文書に出てくる会社を「真っ正直」と言い出したところで、さすがにスタジオは「?」という空気が支配し、キャスターの安藤優子氏らも「節税する手段をもたない私たちにしてみれば…」「そのぶんたとえば従業員の給料をあげるとか」「こっちは消費税10%になるのかならないかと気にしているのに」「年金が…」などと口々に反論を試みた。ところが、興奮した木村氏はそれをピシャリと遮り、こんなことを語り始めたのだ。
「これは節税にもなってない。要するにこのシステムを使って、日本のものすごい金融が動いてるわけ。その結果が、たとえば生命保険になっていたり、年金にもなっていたりするわけ。何兆円って金が動いてる、投資しないと、日本に置いておいたって一銭にもならない。だから、その過程のなかで使われている仕組みなわけです。だから、これを否定しちゃうと成り立たなくなってしまう」
タックスヘイブンのおかげで、生命保険や年金が払えるって、このヒトはいったい何を言ってるんだろう。タックスヘイブンはほとんどが隠し資産になるんだから、年金にも生命保険にもなるわけがない。木村氏は、普通の(タックスヘイブンではない)海外ヘッジファンドへの投資と完全に話をすりかえているのだ。
ここまで無茶苦茶を言うのって、木村氏はタックスヘイブンの意味を知らないのか、あるいは、自分の近い会社か人間がタックスヘイブンを使っていて、どうしても擁護したいか、どっちかだろう。
『グッディ!』は、こんなデタラメを誰もさえぎらず、社会の公器たる電波を使ってそのまま垂れ流したのだ。こんなことが許されていいのか。というか、こんな人物を解説者に呼んで、この番組は大丈夫なのか。
それにしても、パナマ文書報道を匿名にすると宣言した読売新聞にしても、木村氏にしても、普段は「国家、国益のことをもっと考えるべき」などとご高説を垂れている方々だ。にもかかわらず、日本国内で納めるべき税金を逃れ、国家の富を流出させているタックスヘイブンの利用を、どうしてここまで全面擁護できるのだろう。
いや、読売や木村太郎にかぎらず、今回のパナマ文書報道で「合法だ」「何が悪い」と開き直り発言をしている連中を見ていると、ホリエモンのような新自由主義者に加え、「国家」や「国の誇り」を強調する保守主義者や右派がやたら目につく。
ようするに、連中は国民の安全や健康でなく、富裕層の利益を守るために、「国家」だの「国益」だのと言っていただけなのだ。
パナマ文書の問題は、連中の言う「国家」の正体、そして本物の「反日」が誰なのかを浮き彫りにしてくれたと言えるだろう。
(宮島みつや)
最終更新:2016.05.11 07:06