実際、敗れたB案の設計者・伊東豊雄氏は前述の会見で、「ある程度A案ありきだった部分もあるのかも」と、その可能性を示唆している。
だが、この出来レースは、新たな火種を抱えることになった。大成建設救済のために観客席をハディド案と似た構造にしたため、ハディド氏に訴えられる可能性が出てきたからだ。
「声明でも知的財産権がハディド氏にあることを強調していますし、その可能性は高い。せっかくコストを抑えたのに、巨額の賠償金をとられるなんてことにもなりかねない。そもそも、政府もJSCもひた隠しにしていますが。実際は、ザハ案白紙撤回にともなう補償金は他にも発生する可能性があり、トータルすると、ザハ案と同じくらいの金額になりかねない」(全国紙社会部記者)
折しも、東京五輪の費用が当初予算の6倍、1兆8千億円の爆増していることが判明したばかり。新国立競技場は後に、オリンピックをきっかけに地獄に引きずり込まれた日本の“レガシー”として語り継がれる存在になるかもしれない。
(田部祥太)
最終更新:2016.01.17 08:00