だが、現役自民党区議が肩書きを隠し、あくまで一般人のフリをして安倍政権についてコメントしたことは、明らかだろう。
大森議員は、番組出演時にはスーツ姿で、胸には「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)のブルーバッヂと、JOC(日本オリピック委員会)のエンブレムと思しきバッヂをつけていたが、議員バッヂは確認できなかった。わざわざ外していた可能性が高い。
これはもしかしたら、例の「自民党ネットサポーターズクラブ」(J-NSC、通称ネトサポ)がネットでやっていることと同じ手法ではないのか。ようするに、実際は自民党の仕込みなのに、まるで一般市民を装って、安倍政権を絶賛し、民主党などの野党政権を批判。それがあたかも世論であるかのように、拡散させていく、というやつだ。
今回、自民党が個別にそんな指令を出していたとは思わないが、安倍体制になって党全体にこういう“サクラ工作”を奨励する空気があることは事実だ。今回はそれを、迂闊な区議がまさかの顔出しでやってしまったということだろう。
ただ、ネットでは触れられていないが、その“自民党のサクラ”であるはずの大森議員は、意外なことも述べていた。それは「アベノミクスの効果が感じられない」という発言だ。安倍政権の3年間で収益は上がったか、アベノミクスは効果があったかと聞かれるたび、大森議員はこう答えていた。
「上がっているという印象はないです。私だけではなくて、同業の人たちに聞いても、上がっているという印象はないかなと思います。やはりコストがかかったりしているところが波があるので、平均に慣らすと、やはり利益が上がっているという印象はちょっとないんじゃないか」
「私の場合は街場の業者なんですよ。ゼネコンの方達と取引している業者とまあちょっと違うので、構造的にちょっと違いがあるので」
「われわれの業界だけでいうと、(アベノミクスは)あまり効果的には伝わってないって印象ですよね」
「直接アベノミクスというところでは、あまり感じてないんです、われわれは」
このように、地域の中小企業経営者の実感からアベノミクスの効果を繰り返し否定しつつ、“儲かるのは大手ゼネコンと取引している業者だけ”とすら説明していたのだ。