たとえば、天皇が昨年の誕生日会見で、「平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り~」と憲法に言及した部分について、NHKは安倍政権に配慮して、完全に削除してしまった。また、今年の美智子皇后の「A級戦犯」発言についても、この部分を大きく取り上げた新聞、テレビは皆無に近かった。全国紙の政治部記者がその理由をこう解説する。
「読売、産経、NHKは安倍政権の広報機関のようなものですから、改憲に水を差すような発言は報道しない。一方、朝日などの左派系メディアは今、弱っていますから、それを取り上げることで『天皇の政治利用だ!』 と言われるのを恐れて腰が引けている。結局、天皇陛下や皇后陛下がどんなに護憲発言をしても、国民には伝わらない、そういう状況になっています」
この先、おそらく天皇と皇后はますます孤立を深め、何を話しても政権から無視される状態になっていくだろう。だが、そのことは、天皇が政治利用される危険性がなくなるということとイコールではない。たとえば、代替わりをして、次の天皇や皇后が自分たちの意に沿う発言をしてくれるとなれば、改憲をめざす国家主義的勢力は確実に「天皇のお言葉を聞け」と政治利用に乗り出すはずだ。
実際、安倍政権と一部の保守勢力はすでに皇太子、雅子妃夫妻を今の天皇、皇后とは逆の方向に導くべく動き始めているという見方もある。この件については、また稿を改めて検証してみたい。
(エンジョウトオル)
最終更新:2015.12.22 11:03