当サイトでも折に触れて取り上げてきたように、岸田繁(くるり)、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)といったミュージシャンも安保法制に対し声をあげてはいたが(アジカンはデビューしてから10年以上、くるりにいたっては20年近いキャリアがあるので若手とは言えないかもしれないが……)、長渕が指摘するように口をつぐんでいた者が多かったのは事実だ。
この長渕の挑発に、一人でも多くのミュージシャン・表現者が反応してくれることを願わずにはいられないが、しかし、すっかり牙を抜かれた今の音楽業界の状況を見ると、それはなかなか難しいかもしれない。
長渕は安保法制や政治状況に対する沈黙とは別に、もう一つ、若手ミュージシャンにこんな批判をぶつけている。
「とにかくリアリティがない。「お前、それ本気で歌ってる?」って問いたくなる歌ばっかり。「さびしい」とか「君を笑顔にしてあげる」とか、そんな言葉をとりあえず並べただけ。「おい、お前のもっとも大事なものってなんだよ?」と問いたい。僕は、歌の本質とはリアリティだと思っています。アメリカのことを歌おうが、恋愛のことを歌おうが、必ず純粋であるべきです。今は取り急ぎ作った不純な歌ばかりだ」
そう。だからこそ、私たちは長渕の“純粋”の言葉に改めて耳を傾ける必要があるもかもしれない。
(新田 樹)
最終更新:2015.12.08 08:11