確かに、靖国神社を舞台にこれまで韓国人や中国人による事件が何度か起こっている。2008年には中国籍の男が日の丸を踏みつけ、11年12月にはやはり中国籍の男が神門の一部を燃やす事件があった。その後の13年には韓国籍の男が拝殿に放火しようとして逮捕されている。さらに2000年以降、靖国神社のホームページは断続的にサイバー攻撃にもあっている。
しかし、これまでの中国人や韓国人の靖国攻撃で、爆発物などが使われたことはほとんどなく、今回はパターンがかなり違っている。実際、公安担当記者も政治テロとの見方を一笑に付す。
「もし本当に政治的に靖国神社を狙ったのなら、公衆トイレなどではなく本殿や拝殿を狙うはずですし、時限発火装置といっても幼稚な作りで爆発能力もほとんどないと見られています。当初、爆発でトイレの天井に穴があいたとされましたが、それは人為的に開けられたものだと判明していますし、トイレ内の壁や床もこげていなかったし、爆発による飛散物もなかったんですからね。警察も素人の愉快犯、しかも単独犯との見方を強めている」
だが、真相は別にして盛り上がっているのが、過激派や反日外国勢力による“犯行説”。
しかも、問題は、今回の事件を警察や政府、そして右派勢力がまたぞろ巧みに利用しようとしていることだ。なにしろ今回の事件のタイミングは絶妙だった。11月13日パリの同時多発テロが起こり、日本でもテロに対する警戒感が強まっていた最中に事件は起こったからだ。
また、本サイトでも報じたように政府はパリ同時テロで共謀罪を蒸し返し、また外務省ではNSAや内閣調査室と連携した新たな情報機関「国際テロ情報ユニット」を来年4月新設に向け動き出している。さらに、より広範囲で強固な“盗聴法”改正法案も国会に上程中だ。
「今回の事件で誰が得をするのか。テロもどきの手法で靖国神社を狙ったが、しかし場所は公衆トイレで、実際爆発の形跡もなく、音と煙だけで人的被害もない“なんちゃって爆弾”ですからね。愉快犯どころか、テロの危機を煽りたい右派の自作自演説まで流れている。どちらにしても、警察・公安にとっては損はなく、関係者からは「これで予算が取れる」という声さえ上がったようです」(同前)
実際、警察、公安はこの事件を大いに利用している節さえあるという。たとえば、この間、現場にあった鉄パイプについて「油の匂いがする固形物が入っていた」「火薬が焼けたあとのようなものがあった」などと様々な情報を思わせぶりにリークしているが、これは明らかに事件を引っ張るために仕掛けているとしか思えないという。