そして、加藤氏は実際に強いバックを得て、政治家になり、今回、とうとう大臣にまでなった。
権力を“閨閥”で固め、“華麗なる一族”ごっこで内閣がつくられてしまう様を見ていると吐き気をもよおすが、しかし、この加藤勝信氏の大臣抜擢においてもっと恐ろしいのは、加藤氏自身の“政治的姿勢”だ。
安倍チルドレンの加藤氏は、ご多分に洩れず、完璧なネトウヨ脳の持ち主。「創生」日本の事務局長を務め、「神道政治連盟」「日本会議国会議員懇談会」にも所属するというネトウヨ議員の役満を誇り、従軍慰安婦を「どこの国にもあった」とNHK・籾井勝人会長が発言した際も、「公共放送として、良い番組を国民に提供する期待をしっかり担っていただけると考えている」と擁護している。
さらに加藤氏は、メディア圧力発言が飛び出した例の「文化芸術懇話会」を発足させた張本人。つい最近、役職停止が1年から3カ月へと勝手に短縮された木原稔議員や、今回、官房副長官に選ばれた萩生田光一議員(昨年末の参院選でテレビ局への圧力文書を送りつけた人物でもある)とともに呼びかけ人となり、〈芸術家との意見交換を通じ「心を打つ『政策芸術』を立案し、実行する知恵と力を習得すること」〉を目的に掲げて会を立ち上げた。
政策芸術とはまさにナチスにおけるヒトラーの発想そのままだが、ゲストに招いた百田尚樹氏が「沖縄の新聞を潰す」発言をした際も、加藤氏は「意見は傾聴に値する」などとコメント。到底まともな了見をもっているとは思えない。
しかも、加藤氏がやっかいなのは、このネトウヨ思想に、元大蔵官僚らしい“小狡さ”“計算高さ”が乗っかっている点だ。
加藤氏は、他の頭の悪い安倍チルドレンのようなヘイトまがいの発言や露骨な戦前復古的主張はしない。むしろ、安倍首相の好戦思想、歴史修正主義的主張を代弁しつつ、国民から危険視されないよう、欧米諸国の反発を得ないよう、どうごまかすかを常に考えているように見える。
その一例が、憲法改正についての自民党プロジェクトチームの会合での、加藤氏のこんな発言だろう。
「個人・家族・コミュニティ・国という階層のなかで、日本人は国も捉えているのではないか。したがって、急に国に奉仕しろといわれても飛びすぎて、まず家族・コミュニティに奉仕をする延長線上のなかに国に対する奉仕も位置づけたほうがなじみやすいのではないか」(2004年、自民党憲法調査会憲法改正プロジェクトチームの第9回会合での発言)