「元少年Aはすでに成人です。しかもカレは自分の犯行を本にして出版しており、少年法61条に定められている“罪を推知する情報”を自ら公開している。だが、匿名のままではAが発信する情報に正確性や透明性は担保されず、国民は検証も論評もできない。それはおかしな話です。今回のケースは少年法61条の想定外であり、保護対象に入らないと考えます」(紀藤正樹弁護士、「週刊ポスト」より)
しかし、犯罪を犯したのはあくまでAが14歳のときであって、今は6年の矯正教育に保護観察期間も終えて、犯罪者ではない。とくにHPについては、奇妙な作品群を発表しただけで、事件そのものには触れているわけではない。実名報道をする論拠としてはかなり無理があるだろう。
ただ、そういった問題より、今回、意外だったのは、実名を掲載した週刊誌が「週刊ポスト」だったことだ。これまで少年犯罪に関して実名や顔写真を掲載して物議を醸してきたのはもっぱら「週刊新潮」「週刊文春」であり、「週刊ポスト」はこれまで少年犯罪について実名や顔写真を晒して報じたことはなかった。
それがなぜ──。一説には、今回の実名報道は今年7月、編集長に返り咲いた「週刊ポスト」の飯田昌宏編集長のツルの一声で断行されたのだという。
「HPの存在を知るや、飯田さんは異常に興奮して、『こんなヤツをのさばらせちゃいけない!』と激怒。編集部に『Aの身元を徹底的に晒せ』と大号令をかけたようです」(小学館関係者)
だが、飯田編集長といえば、もともと「死ぬまでセックス」シリーズなどのナンパ路線で知られる一方、批判精神は乏しく、権力にはからっきし弱いという評判の編集者ではなかったか。
そもそも、同氏がわずか1年で復帰することになったのも、その「権力にたてつかない」姿勢が評価されてのことだった。
実は、飯田編集長が返り咲く前、三井直也氏が編集長を務めていたときの「週刊ポスト」は反安倍政権の姿勢を鮮明にし、菅義偉官房長官の日本歯科医師連盟からの迂回献金問題や、高市早苗総務相の大臣秘書官をつとめる実弟が関わった「高市講演会企業の不透明融資」問題など、政権閣僚のスキャンダル記事を次々とスクープしていた。