まんがで歴史を紹介するという、きっと多くの人が学校の図書室などで見たことがあるであろうシリーズだが、久々に手にとって驚いた。筆者がこのシリーズを読んだ1980年代は貸本時代の画風のような絵柄だったが、現在のものは萌え要素が感じられる絵になっている。事実、第10巻『近代国家への歩み〜明治時代後編〜』のまんがを手がけているのは、『ラブライブ!』のSD挿画などを担当している清瀬赤目氏。伊藤博文も田中正造も「なんかかわいい」のである(一方、第11巻に移ると、今度はぐっと大人っぽい絵となり、平塚らいちょうや芥川龍之介、昭和天皇までもが妙に色っぽい)。
ただ、肝心の内容は、旧版に比べると国内の事情に割きすぎているきらいはある。旧版では、韓国併合を「日清・日露戦争でさんざん国内をあらされ」た韓国国内の反発にもふれ、日本が強引に植民地化を進めていったことが描かれるが、この新版ではそうした描写がない。また、軍部の暴走や戦時体制における弾圧、大政翼賛会の支配構造などは、議会の流れと国民の目線が織り交ぜられた旧版のほうがわかりやすい。しかも、太平洋戦争に突入すると新版は駆け足で、さすがに空襲による被害などはオールカラーの新版のほうが迫力はあるが、日本兵の多くが飢えや病気で亡くなったこと、大本営発表で国民が騙されたこと、特攻などの無謀な作戦の不条理などは新版には描かれていない。
そもそも、旧版では明治後期〜終戦まで3巻を費やしているが、新版は2巻で消化している。この扱いの縮小からも“触らぬ神に祟りなし”という出版社側の及び腰姿勢がわかるかのようだ。
高田氏が言ったという「僕は戦争のない世の中にしたいんだ!」という気持ちには全面的に共感するが、もしそうならば『はだしのゲン』全巻セットなどのほうが、歴史修正の波に対抗できたような気もする。ぜひ高田氏とジャパネットたかたには、今後も反戦のための商品展開を期待したいところだ。
(編集部)
最終更新:2018.10.18 03:22