また、海洋プレート内地震についても、1909年にM7.6の宮崎県西部地震が起きているが、石橋教授によれば、フィリピン海スラブは宮崎県西部だけではなく、鹿児島県から南西諸島まで続いており、鹿児島でも同じ規模のものが起きる可能性は十分あるという。そして、その場合、川内原発の震度は5強に達すると指摘している。
ところが、九州電力はこういったケースを一切検討しないまま、震度5弱に「達せず」と強弁し、規制委もそれをそのまま追認しているのだ。
規制委の田中俊一委員長はこの件で記者に質問された際、質問した記者を小ばかにするような態度でこう言い放った。
「石橋さんが言っているだけであって、あなたが『石橋信者』だから、そんなことを言っている」
科学的で客観的な石橋教授の指摘を質問しただけで「信者」呼ばわりして排除する。これが科学者の態度か、といいたくなるが、規制委の手続きを無視するやり方に対して、石橋教授は「規制委員会は事業者の使い走りか」と厳しく批判している。
■火山学者がこぞって批判する火山リスク想定の非科学性
もうひとつ、重要なのは、火山リスクの過小評価だ。川内原発は、火砕流の到達距離とする150km圏内に14の火山、5つのカルデラがある。とくに、姶良カルデラという巨大火山にはきわめて近く、噴火した場合、川内原発に火砕流が及ぶことは九電も認めている。
これについては昨年、『報道ステーション』(テレビ朝日系)が特集で追及していたが、新規制基準では、原発の敷地内に火山噴火による火砕流などが及ぶ場合は立地不適となり、本来は川内原発もこれに抵触するため再稼働は認められないだろうと考えられていた。
ところが、九電も規制委も、川内原発が稼動している数十年の間に噴火は来ないとして立地不適にしなかったのである。
しかし、審査では火山の専門家は一人も意見を聴取されておらず、火山学者の多くは、数十年の間に噴火しないとは科学的に言えない、と疑義を呈している。九電側はカルデラ噴火が6万年間隔だとしているが、これはただ平均を出しただけで、火山学的はまったく根拠のないものだ、とも指摘されている。