『独裁体制から民主主義へ~権力に対抗するための教科書~』(ちくま学芸文庫)
日本に戦争の途を開くための所謂戦争法案の成立をめぐる攻防がいよいよ大詰めを迎えている。
この法案が、米国の戦争に日本が参戦できるように、米国の指示に従ってつくらされていることは誰もが知っている。ところが安倍政権とメディアは中国を仮想敵国に仕立てあげて侵略の危機をあおることで、戦争への動員をはかっている。
中国が攻めてくる、だと? 馬鹿いうな。
株価がちょっと下落したらあわてふためいているように、中国なんぞ「社会主義」を僭称しようと下半身はずぶずぶの市場経済だ。米国に次ぐ第二位の貿易相手国である日本を破壊する気なんてあるのかよ。政治対立が激化しているかに見える2014年においても両国の貿易総額は伸長を続け、過去最高額となっている。あるいは、日本国債を最も保有してる国はどこだと言えば、それは2010年からずっと中国だ。中国が日本国債の放出を匂わせることで国債を暴落させ日本経済を混乱に陥れることもできる。いずれにせよ、日本経済が機能しなくなったら、自国の経済が大打撃を受けるはずだ。
そのように経済だけみても日中は複雑に絡み合ってる。沖縄に米軍基地があるから中国が攻撃してこないのだなんて思い込んでるやつはあまりに単純だ。もっと経済や文化を軸にした紛争抑止の外交ができるはずだ。
しかし。中国への信頼を説くのが本稿の目的ではない。中国共産党が信頼だけで通用する相手でないことも当然だ。言いたいのは、戦争推進者の言い分を鵜呑みにするな、ということだ。
さらに、せっかく反戦を唱えているのに、「軍隊がなくて外国が侵略してきたらどうするんだ」と恫喝されて、もごもご口ごもる姿が目について歯がゆい。反戦の旗を掲げる者たちよ。決然と反論せよ。ここに軍事力を用いない政治的抵抗の方法を紹介しよう。
きょうのテキストはジーン・シャープ著『独裁体制から民主主義へ~権力に対抗するための教科書~』(ちくま学芸文庫)だ。本書は1993年に英語とビルマ語で初版が出版されて以来、30カ国以上で翻訳されている。副題の通り、権力に対抗するための方法が具体的に示されたいわばマニュアル本だ。
本書の与えた影響は大きい。ミロシェビッチ政権を打倒したユーゴスラビア「オトポール!」、チュニジアのジャスミン革命をはじめとするエジプト、シリアなどの「アラブの春」と呼ばれる民主化運動、ウクライナのオレンジ革命、ウォール街占拠、香港雨傘運動など、ここしばらくの間に起きた独裁政権打倒/民主化運動には、本書が深くかかわっていると言われる。