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軍の命令で米兵捕虜を生きたまま解剖…70年目に明らかになったあの戦争の“真実”

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『九州大学生体解剖事件 七〇年目の真実』(岩波書店)

 先日、安倍政権が閣議決定した安保法制。この法制について参議院予算委員会で「戦争法案」ではないか、と疑問を呈したのが福島瑞穂議員だ。福島氏の発言を自民党の理事は「不適切」とし、議事録での修正を求めるという言論弾圧を平然と申し出たが、当然ながら修正要求に応じるはずもなく、そのまま公開された。

 国会での論議中に発せられた「戦争法案」発言すら揉み消そうとする面々は、安保法制を「平和安全法制」という命名で広めようと躍起になっている。安倍首相は14日の会見で「戦争に巻き込まれる、という批判がまったく的外れであったことは歴史が証明している」と語っているが、「平和安全を守るために」という大義名分が、いくつもの戦争の動機になってきたことは、それこそ歴史が証明している。

 安倍首相は会見で「まるで自衛隊員の方々が、今まで殉職した方がおられないかのような思いを持っておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、自衛隊発足以来、今までにも1,800名の自衛隊員の方々が、様々な任務等で殉職をされておられます」と語っている。平和安全のためには、人が血を流すこともやむを得ないという本音を漏らすことで、自らがレッテル貼りだと断じたはずの「戦争法案」という命名を呼び寄せてしまった。

「戦争に巻き込まれる、という批判がまったく的外れであったことは歴史が証明している」という首相からの空疎な宣言を頭に残しながら読んだのが、熊野以素『九州大学生体解剖事件 七〇年目の真実』(岩波書店)。著者が「再び『戦争のできる国』になろうという逆流が渦巻く今日こそ、明らかにしなければという思いで、本稿を記した」とする一冊。先の戦争に巻き込まれ、国の都合を個人の責任として押し付けられ、死刑判決まで受けた若き医師の苦悩が描かれる。

 九州大学生体解剖事件とは、終戦直前の1945年春、九州大学医学部が日本軍から米軍捕虜の提供を受け、生体実験によって米軍捕虜8名を殺した事件のこと。著者の伯父である鳥巣太郎助教授は4回行なわれた手術のうち、抵抗しつつも2回の手術に参加してしまう。補助作業のみだったが、終戦後に開かれた裁判では生体実験の首謀者の1人に仕立て上げられ、死刑判決を受けることになったのだ。著者は、入手した裁判資料のなかに再審査資料が多く含まれていることを発見し、親族の証言などを交えながらその真実に迫った。

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