有識者会議の人選に疑問の声が…(首相官邸ホームページより)
戦後70年を迎える今年、安倍首相による新たな首相談話が注目されている。論点は、1995年村山談話の第二次世界大戦における日本の「植民地支配」「侵略」という表現を使用するかどうか。安倍首相は過去の首相談話を“全体としては”引き継ぐとしているが、いまのところ具体的な文言について明言は避けている。
今月25日、この新談話を検討するという名目で集められた16名による「有識者会議」(=「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」)の初会合が行われた。だが、そのメンツを見てみると安倍首相と近しい保守系ゴリゴリの識者ばかり。
たとえば、座長代理の国際大学長・北岡伸一氏は、第一次安倍政権下での首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の有識者委員。さらに第二次安倍政権では「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の座長を務めた。昨年5月には解釈改憲の提言をとりまとめ、集団的自衛権行使へ大きく舵をとらせた人物であり、自民党的親米保守の代表的存在だ。
また、元防衛大学校長・西原正氏も、韓国・中国の「反日外交」をたびたび批判する保守論客として知られる。2012年には産経新聞社が主催する「正論」大賞を受賞。13年1月25日付の産経新聞紙上のコラム「正論」では、「河野談話には、不適切で信憑性が疑われる表現がある」と記すなど、アメリカの反応を見ながら「より正確なものに」していくべきと述べている。
元外交官・宮家邦彦氏の存在も気になるところだ。最近では、イスラム国人質事件関連のテレビコメンテーターとして、一貫して首相・政府擁護発言を連発。後藤健二さん殺害の報が入った直後のテレビ朝日『サンデースクランブル』(2月1日)では、安倍首相の“2億ドル演説”の影響を強く否定しつつ「これまでの安全保障を見直す必要がある」と発言していた。
だが、その“安倍親衛隊”のなかでも、やはり特筆すべきはこの人をおいていないだろう。京都大学名誉教授・中西輝政氏である。
実は今回の有識者会議のメンバーが発表されたとき、与党関係者の間では「いくらなんでも、あの人を起用するのはまずいだろう」との声が漏れた。
たしかに、中西氏は安倍首相と官房長官時代から非常に親しい付き合いで、ずっと“ブレーン中のブレーン”“安倍首相のタカ派思想の家庭教師”といわれてきた人物だ。第一次安倍政権の「美しい国づくり」プロジェクト企画会議委員をつとめたこともある。
しかし、中西氏はただの保守ではない。これまで歴史修正主義、さらにはファシストといっていいような発言を連発してきた極右論客なのだ。