左/安倍首相 右/北村滋内閣情報官(内閣官房HPより)
それは昨年のクリスマスイブ、12月24日のことだった。JR総連の支援を受けている民主党の田城郁参院議員がこの日、記者会見するということで、安倍晋三首相の手足になって日夜活動している内閣情報調査室と警視庁公安部が、早朝から情報収集に追われていた。
「田城氏が会見を開いたのは秘書の使い込みが発覚したため政治資金収支報告書を修正するというものだったんだが、その際、田城氏が会見の席で“公安が自分とJR総連の疑惑をでっちあげようとしている”と批判会見を開くのではないかと噂が立ち、一時騒然となったんだ」(全国紙政治部記者)
JR総連といえば、組合員7万人を誇るJRの労働組合で、傘下のJR東労組はJR東日本の社員の80%以上が加盟している最大労組。ところが、この労組を最近、安倍晋三首相がしきりに標的にしているのだ。たとえば、10月30日の衆院予算委員会では、相次ぐ閣僚の政治資金スキャンダルを質した民主党の枝野幸男幹事長に向かって、首相がいきなりこう切り返した。
「殺人や強盗や窃盗や盗聴を行った革マル派活動家が影響力を行使し得るJR総連から、枝野議員は約800万円、献金を受けていた。殺人を行っている団体でありますから、ゆゆしき問題ではないですか」
安倍首相の思わぬ答弁に、委員会室内から「総理大臣の言う言葉か」「中傷はやめろ」と怒号が飛び交い、大島理森委員長が「御静粛に!」と繰り返しいさめる騒ぎとなった。
たしかに、安倍首相が語るように、JR総連は前身である動労時代から革マル派の支配下にあると噂されてきた。最大の根拠は2011年に亡くなるまでJR総連に君臨し続けた松崎明元動労委員長が革マル派の幹部だったことだ。
だが、その松崎委員長が率いる動労=JR総連は国鉄民営化の際に自民党と手を組んで、民営化に全面協力。逆に国鉄最大労組だった国労つぶしを推進してきた。しかも、民営化後は労使協調路線をとり、JR東日本とJR東労組はストライキを放棄する労使共同宣言を締結するなど、完全に一体化している。そのため、他の新左翼セクトや対立組合からは「自民党の犬」「御用組合」と批判されていた組合なのだ。
実は革マル派との関係についても、民営化でJR総連になってから、松崎一派が革マル中央と決裂したという情報もあり、真相はさだかではない。2009年には、革マル派と関係があるとしてJR総連を家宅捜索した警視庁に対して、東京地裁が「関係は認められない」という判決を下している。