にもかかわらず、こんなに多くの芸能人や作家が「赤旗」に登場し、政治的な発言に踏み込むようになったのはなぜなのか。繰り返すが彼ら彼女たちのほとんどは、共産主義者でも共産党支持者でもない。
こうした背景にはおそらく、比較的リベラルな志向をもっている芸能人や作家の中で、安倍政権の政策に対する危機感が高まっていることがあるだろう。憲法改正や集団的自衛権行使などによる戦争への道になんとか警鐘をならしたい、そして最悪の原発事故を経てもいまだこれを推進しようという安倍政権の政策に対し、反対の意志を表明したい、そういう有名人が増えているのだ。ところが、メディアの側はそれこそ「偏向」といわれるのをおそれ、著名人に政治的な意見を表明する場を与えようとはしない。そこで、彼らが「赤旗」にその場所を求めるようになったということのようだ。
もちろん、保守勢力が叫ぶように、共産党にも問題がないわけではない。党内の独善的体質は改善されたとはいえないし、かつて対立していた中国共産党と関係を修復して以降、中国に対する批判をほとんどしなくなったという問題もある。
しかし、今の状況に危機感を持つ人々にとって、この政党しか選択肢がない、というのはまぎれもない現実なのだ。今はとにかく、タカ派保守陣営の言論支配、批判にめげることなく声を上げる芸能人・著名人が増えていることを素直に評価したい。
(野尻民夫)
最終更新:2014.12.11 05:42