『女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち 』(光文社新書)
アメリカ国務省が公表した人身売買に関する報告書で、日本の「JKお散歩」が新たな人身売買の例として示され、話題になった。「JKお散歩」とは、秋葉原などの路上で女子高生が会社帰りのサラリーマンなどに声をかけ、一緒に食事をしたり、カラオケに行ったりしてデートするというもの。昨年も女子高生に個室でマッサージしてもらう「JKリフレ」が摘発されるなど、ここ数年、“JK産業”で働く女子高生たちが増加している。
これまで、児童買春や犯罪の温床になる場で働く女子高生たちは、金銭面で困窮している者や家庭環境に問題がある場合が多いと思いがちだった。だが、『女子高生の裏社会』(仁藤夢乃/光文社)によると、一概にそうとは言えなくなってきているという。
たしかに、親にお金を渡すために働くという子もいる。18歳のサヤは、高校受験に落ちてから、親に毎朝、貯金残高を告げられ、「金がない、お前の授業料でいくら消える」「銀行に借金しているのはお前のせいだぞ」と言われるようになったことがきっかけで、JKリフレを始めた。そして、稼いだお金で家にお金を入れ、自分の服を買っているうちに、やめられなくなってしまったという。
妹に紹介され、姉妹でJKお散歩をしているレナは、父子家庭でお小遣いをもらっておらず、遊びやごはん代、交通費も自分でやりくりしている。
「家庭のお金の事情もあるし、自分でやりくりしていかなきゃいけないから、こういう仕事をしていても仕方ないでしょって勝手に納得しています」
そう語る彼女の表情はひきつっており、けっして割り切って納得しているようには見えなかったと、同書の著者・仁藤は書いている。
また、中学時代、いじめに遭い、精神的な不安を抱えるようになったという18歳のカオリは、シフト制のバイトをこなせる自信がなく、「働くことに自分を慣れさせたい」と思ってお散歩を始めた。好きなときに好きなだけ働けるお散歩は、時間の自由も利く。彼女は、お散歩を「社会に自分を慣らすためのリハビリ」として捉えている。
こんなふうに、いわゆる「貧困層」「不安定層」と言われるような少女たちもいるが、一方で、最近では家族仲も良く、成績優秀で、学校では人気者のごく普通の女子高生が売春や犯罪の入り口に立っている。