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野田ホーローはなぜ愛され続けるのか? 料理はふつうなのに…

 なかでも、「調理器具としての保存容器」の強みがもっとも発揮されるのが、第四章「かたまり肉があればいつもごちそう風に」だろうか。

 まずは、浅めの長方形型バット「レクタングル浅型S」を使った「蒸し鶏」。鶏もも肉に酒・塩・しょうがのしぼり汁をふって、バットごと蒸し器へ。蒸し終わったら、冷ましてそのまま冷蔵庫へ。普通なら、下味を付けるバット、蒸し器、耐熱容器、保存容器の4つが必要になるところ、ホワイトシリーズを使ったレシピであれば2つで済んでしまう。

 また、大きめで深みのある「レクタングル深型LL」を使った「ゆで豚」「煮豚」は、フライパンで焼き目を付ける、共に漬け込むゆで卵を作るといった+αの行程(煮豚)の有無はあれど、基本的には、容器に入れる→直火にかけて煮る→そのまま冷蔵庫で保存、というシンプルな流れは一緒だ。これも洗い物が少なくてすむ上に、そのまま食べる他、さまざまな料理に流用できて、ひじょうに便利だ。

 本書で紹介するレシピの主眼は何かと考えると、「手抜きではない時短料理」ということになるだろうか。第一章「野菜は下ごしらえが肝心」で紹介されるのは、「芯」「葉」などパーツごとに分けて保存した野菜を使って作るスピーディーな料理だ。また、第二章「常備菜があればごはんの準備もすぐできる」では、ポテトサラダ、ひじき煮など、食卓を短時間で整えるのに便利な常備菜が紹介される。その他に、挽肉料理やデザートの章もあるが、いずれにせよ料理の内容としては、良く言えばオーソドックス、悪く言えば目新しさはない。つまり、琺瑯保存容器を使うことで調理が効率化されてはいるものの、ざっくりと言えば、ごく普通の常備菜が並んでいるのである。

 常備菜レシピ本はすでに多数存在する。しかし本書が類書に埋没せず、独自の魅力を発揮しているのは、やはり野田琺瑯の商品の魅力・ブランド力の支えがあるからだろう。本書で紹介されているのは、琺瑯容器を使ったレシピだけではない。敷衍して言えば、野田琺瑯を取り入れた「豊かな(食)生活」こそがキモなのだ。ゆえに、そのルックスの美しさが生きてくる。つまり、機能性だけではなく、モノとしての魅力が同じくらい重要なのである。野田琺瑯を持つこと、使うことは、台所仕事の、さらには生活全般への「モチベーションを上げる」ことにつながる。これまで、ライフスタイル系の雑誌などで、料理研究家や、スタイリストたちがごぞって野田琺瑯を取り上げてきた理由も、おそらくこのへんにある。「ホワイトシリーズ」は、「豊かな生活」というイメージを、そのクリーンなホワイトカラーの輝きのなかに宿している。そして、ごくフツーの惣菜や家庭的なデザートといった素朴な料理が並ぶことで、その豊かさは、リアリティをもって読者に響くのである。
(辻本 力)

最終更新:2014.07.31 06:04

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