にわかには信じがたいような話だが、告白は具体的かつ詳細で、入念な裏取りもされていた。しかも、告白した女性は中居クンに中絶同意書にサインをさせており、「噂の真相」は同号のグラビアで、その中絶同意書も公開。「中居正広」という署名が本人の直筆であることを証明するために、かつてアイドル雑誌に掲載されていた中居直筆の文字を持ち出して比較検証までしていた。
左/人工妊娠中絶同意書 右/アイドル雑誌掲載の直筆文字
ところが、このスキャンダルはほとんど一般に知られることはなかった。テレビのワイドショーやスポーツ紙、雑誌に至るまで完全黙殺で、後追いで報じたのはわずかに東京スポーツ一紙のみだった。周知のように芸能マスコミにとってジャニーズスキャンダルはもともとタブー。それに加えて当時のSMAPは、まさに「国民的」といえる人気を維持しており、中居も97、98年と2年連続でNHK紅白歌合戦の司会を務めるなど絶好調だった。
この記事が出た後、ジャニーズから「あの告白はすべてファンの妄想」という通達がなされたため、取材や利権配分から干される事をおそれた各メディアはそれをうのみにしてガセ記事として片付けてしまったのである。
そこで、「噂の真相」は翌月、追撃をする。告白した女性は中絶した後、中居クンにその不実な対応をなじる電話をかけ、テープに録音していたのだが、その音声をそのままウェブで公開したのである。
テープは「あまりにもなんか冷たいというか。もともといらない子供だったんだからそういうふうにやったってなんとも思わないのかもしれないけど」と迫る彼女に対して、中居クンが「一人の女性を傷つけた訳だし、おれも傷ついてるよ」と言い訳を繰り返すかなり生々しいものだが、その声や話し方はまさに中居クンのそれだった。
だが、それでも大手芸能マスコミが動くことはなかった。しかも、ジャニーズ事務所は「噂の真相」に対して訴訟や抗議といったアクションを一切起こしてこなかった。マスコミを押さえた上で完全黙殺することで事態の沈静化に成功したのである。
残念ながら、この状況は現在もほとんど変わっていないようだ。ジャニーズのスキャンダルを扱える大手メディアは「週刊文春」「週刊女性」「東京スポーツ」など、依然として数えるほどしか存在していない。とくにハードなネタを報道できるのは「週刊文春」一誌のみといっていいだろう。そう考えると、今回の森田のスキャンダルも、おそらくは中居クンの記事と同様、大手メディアでは完全黙殺されることになりそうだ。
弱小事務所所属の塩谷瞬のようなタレントは些細なゴシップでも集中砲火を浴びて、芸能生命を断たれるくらいに追いつめられるのに、ジャニーズのタレントは女性を妊娠・中絶させてもなんの批判も受けない。しかも、この状況に多くのメディアがなんの疑問も持たず、不公平をさらにエスカレートさせている。芸能界というのはつくづく異様な場所だといわざるをえない。
(田部祥太)
最終更新:2017.12.07 07:44