一方で、健は湯水のように金を使っていた。健は美術コレクターとしても知られていて、高額の美術品を購入し林原美術館まで運営していたが、「必ずしもその美術品が好きで買った」のではなく、「美術商から泣きつかれたら、思わず個人のお金、会社のお金で買ってしまう」という。優雅に見える社長生活の年俸も確かに優雅で「10年で15億円以上」だったという。
そんな兄に弟は不満を募らせていく。そして、表面上は絶対服従を装いながら、造反的な行為を進行させていったのだ。
「倒産後の調査で、弟は私に何の報告もなく(弟が経営する)太陽殖産に資金をどんどん移していたことを知る」「(弟は)自分の資産管理会社に、相続対策や資本政策のための資金を林原から移していた」「それ以外にも、神戸の北野異邦人館にある複数の飲食ビルに多額の資金を(個人的に)流していた」。しかも「自分の知らないうちに16億5800万円もの負債」を背負わされたという。
何もかもを弟に任せた上の破綻。だから、銀行から破綻したと聞かされても「何がなんだか皆目理解できなかった」とさえ記している。
なんとなく経営破綻の責任もすべて弟のせい、といいたげなのだが、破綻の原因を調査した外部調査委員会の報告書や、特別背任の立件を捜査した検察は、資金流失は“健と靖”が主導したものと断定、過去10年の間に健に支払われた金の中で3億円が使途不明だったことが指摘されている。
弟に会社の経営をも丸投げにし、告白本出版で、経営破綻の責任を押しつけようとする兄。なんとも風変わりで無責任なキャラということは確かなようだが、最後に健の浮き世はなれした強烈エピソードを紹介したい。もちろんこれも告白本で自ら明かしたものである。
「私には霊が見える。どのように見えるかというと、ブルース・ウィリス主演のハリウッド映画『シックス・センス』をイメージしてもらえばいい。町中の至る所で、死んだ方たちが私の前に現れる」
こんな仰天告白をまじめに語る4代目社長の林原健。そのキャラが会社破綻に関係したのかどうか──それは定かではない。
(林グンマ)
最終更新:2018.10.18 03:24