ちなみに、ブラジリアンワックスといっても、ブラジルW杯とはなんの関係もなくて、リオのカーニバルの衣装からもはみ出ない、と名付けられた(らしい)ヘア脱毛の方法だ。やり方はあたたかいワックスを薄く塗ってのばし、その上にワックス脱毛専用の不織布をあてて一気に引きはがす。それだけ。一瞬ですむうえ、根こそぎ抜けるので生えてきにくく、肌荒れもない。レーザー脱毛のように費用もたいしてかからない、というので、こちらもまず女性の間でブームになったのである。2008年に公開された映画版『セックス・アンド・ザ・シティ』でも、たしか主人公たちがブラジリアンワックスで陰毛処理を行うシーンがあった。 そして、このブラジリアンワックスが1〜2年前から男性の間にも広まり、今年5月には東京に初のメンズ専門ブラジリアンワックスサロンがオープンするほどのブームになっているのだ。 ただ、このブラジリアンワックス、人によっては、相当に痛いらしい。『桜木さゆみのイケナイとこイッちゃった』(ぶんか社)という体験コミックエッセイで、作者の桜木さゆみと担当編集者の女性がこのブラジリアンワックスに挑戦しているのだが、布をバリっと引きはがされるたびに、担当編集者が悶絶を繰り返すシーンが描かれている。そばについていた桜木が「ど、どれくらい痛い…?」と聞くと、「子宮口が2センチ開いたくらい」。さらに「出産より痛かった?」と聞くと、「たぶん」と答えるのだ。しかも、この引きはがしは何回か繰り返されるのだが、回を重ねるごとに敏感になって痛くなるという。 もっとも、本サイトの女性編集者にもこのブラジリアンワックス経験者がいるのだが、彼女は「まったく痛くなかった」という逆の感想をいっている。どうやら個人差があるようで、一説には剛毛の人ほど痛いらしい(ちなみに彼女は陰毛が薄いとのこと)。ということは、男性の場合、硬くて量も多いから結構大変じゃないのだろうか。 しかも、ブラジリアンワックスには痛み以外にもうひとつ、難点がある。ブラジリアンワックスは専門のサロンでやることが多いのだが、施術の際にかなり恥ずかしいポーズをとらされるのだ。基本ポーズは下半身裸で仰向けに寝てM字開脚、お尻まわりの毛を脱毛する際には、四つん這いのポーズをとらされることもあるという。 前出の『イケナイとこイッちゃった』でも、作者や編集者は大股開きや赤ちゃんがおむつをかえるようなポース、さらには、自分でおしりの穴のあたりを広げて見せるようなポーズをとらされている。 女性用サロンの場合、施術師(ブラジリアンワクサーというらしい)はもちろん女性だが、男性が客の場合はどうなるのだろう。施術師が女性だと風俗みたいに使う客が出てきそうだし、男性が施術するというのもそれはそれでなんだか恥ずかしい。いや、それより何より、サッカー選手の間で流行っているということは、ブラジルの至宝・ネイマールや、W杯で脚光を浴びたコロンビアのイケメン選手・ロドリゲス、そしてわれらが日本代表のウッチーなども、M字開脚や四つん這いのポーズをさせられて、「ゔっ」「ぐわはっ」とかいう埋めき声をあげているのだろうか。ああ、想像すると、またニヤニヤがとまらない……。 (岡崎留美子)
最終更新:2016.08.05 07:03