そんなBiSの活動はメディアやファンの間で賛否両論を巻き起こしたが、内部でも相当な軋轢を生んだ。BiSのメンバーは現在6名だが、これまでに5名もの脱退者を出している。結成から4年にも満たないグループとしては異常な数字だが、その過激な活動内容が脱退理由となったメンバーも多い。中でもテラシマユフ (現・寺嶋由芙)の脱退は象徴的であった。
テラシマユフの脱退理由は“活動を続ける上での悩みからの体調不良”だったが、きっかけは「My Ixxx」に続く全裸MV「ASH」をめぐる問題だった。全裸でのMVを経験していない途中加入メンバーは、全裸出演を拒否。MVにはプー・ルイのみが全裸出演し、最近のBiSについて「サークル化している」などの批判を展開し、その結果、メンバー内抗争が勃発する。この抗争は運営の手によって“目に見えて仲が悪そうな”オリジナルメンバーのプー・ルイ、そして途中加入メンバーのテラシマユフの決戦として描かれ、最終的にはその討論の場がトークイベントとして設けられるほどの騒動となった。
そんな心情がうかがえる書籍が『BiStory〜アイドルを殺したのは誰?』(BiS著/エムオン・エンタテインメント)だ。この本には、プー・ルイがマネージャーに宛てた1000日分の「報告メール」がそのまま収録されているのだが、そこからは、テラシマユフとの溝が深まり、修復不可能となっていく様がはっきりとうかがえる。テラシマユフがプー・ルイのことを「考えるだけで過呼吸」になり、トーク中に倒れるなど活動に支障をきたしていることを報告。プー・ルイは逆に彼女のことを皮肉たっぷりに「ゆふさま」と呼び、「本当に本当に大嫌いです」とまで綴っている。
しかも、BiSの運営はこの対立を煽り、最終的には新リーダーをファンに投票させ決定するという計画まで進めていた。結局この計画は実施されずマネージャーの謝罪で幕を引いたものの、このようなメンバー間で生じた揉め事・脱退劇までをもエンタテイメントにしようとする運営の姿勢がメンバーの疲弊にさらなる拍車をかけたのは間違いないだろう。
当然ながら、こうしたことが積み重なって、運営との対立も深まっていた。前述の『BiStory』には、プー・ルイがマネージャーに対して「消えてください メンバーのこと考えなさすぎですよね……死んで下さい」とディスるメールも収録されているし、2月の仙台公演のバックステージでは、全裸になってのダイブを強要した映像監督にメンバーが泣きわめきながらつかみかかる事件も起きた。
いつしかメンバーは、自分達を都合よく扱おうとする運営や関係者のことを「大人」と呼ぶようになり、ヒラノノゾミは問題の仙台公演で、脱退したメンバーに触れて“大人なんかもう信用できなくなっちゃった”とファンに告白。カミヤサキもインタビューでこの事件をきっかけに「大人のいいなりにはならないと決めた」と宣言した。これまでの仕組まれた内紛などではなく、「大人」とメンバーの間に生まれたほんものの不信感が露呈し、BiSは運営にとってコントロールがほとんどきかない状態になっていったのである。
しかも、疲弊していたのは、メンバーや運営だけではなかった。解散発表を行ったフリーライブでは、ファンたちが両手を挙げ、万歳を繰り広げるという事態が起きている。普通なら考えられないリアクションだが、実は誰よりもファンたちが疲れきっていたのだ。