しかも、この突然の宣言に対し、Yahoo!ニュースのコメント欄やSNS上では「良く言った」「定数削減は税金の無駄遣いを減らすためにも必要」「自民はこれを飲めるのか」などと吉村代表を評価するコメントが殺到。これに気を良くしたのか、翌17日に出演した『サン!シャイン』(フジテレビ)や『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、語気を強めて「本気で改革を進めることができるかを政治家が示すには『大幅な議員定数の削減』を本気でやると言えるかどうかだ。議員定数の大幅削減が改革のセンターピンだ」と強調。さらに、「(期限は)次の臨時国会。今年中にやりきる。1割(削減)が必要」と、年内中に定数削減を達成することが条件だとぶち上げたのである。
こうして経緯を振り返るとよくわかると思うが、ようするに吉村代表はハナから「企業・団体献金の禁止」を自民党に飲ませようという気はさらさらなく、その話題を逸らすために「『議員定数の削減』こそが改革のセンターピン」などと言い出したのだ。
実際、当の維新幹部も、朝日新聞の取材に対して「論点ずらし」であることを認めている。
〈定数削減を突然訴え始めた理由について、維新幹部は「献金禁止は厳しいから」とし、論点を「献金禁止」から「定数削減」にずらす思惑もあると打ち明ける。〉(朝日新聞デジタル17日付)
つまり、「国会議員の定数削減」は連立協議をスムーズに進めるためのたんなる論点ずらしであるにもかかわらず、吉村代表は「自分の身分を守るために政治をやっている人が多い。これでは日本の改革はできない!」などと喧伝。そこまで言うのなら今年分だけでも31億6021万円も維新に配分されている政党交付金を受け取るのをやめろという話だが、ともかく吉村代表は、自身があたかも真の改革者だと言わんばかりのイメージづくりをおこなうと同時に、高市自民党の反省なき腐敗金権政治の温存に手を貸しているのだ。
しかも、維新の連立を見据えた協議の罪深さは「企業・団体献金の禁止」を棚上げにしたことだけではない。今回、吉村代表が持ち出し、年内の達成を条件とした「国会議員の定数削減」は、少数政党・少数意見を排除する、代議制民主主義の根幹を揺るがすものだということだ。
そもそも、他の先進国と比較すると、日本の国会議員数は人口に対して少ないと指摘されてきた。実際、人口100万人に対する国会議員の数で比較するとイギリスが約21人、フランスが約14人であるのに対し、日本はわずか5.7人。この数字はOECD加盟国平均の半分以下とも言われている。このように、国民の声を政治に反映するには議員数が足りていないような状況であるにもかかわらず、維新は今回、「政治家の覚悟を示す」という謎の精神論で議員数を大幅削減しようというのだ。はっきり言ってめちゃくちゃだ。
さらに、今回、吉村代表は「衆院比例代表の1割(約50人)削減」を打ち出しているが、これが現実になると少数政党は大打撃を受けることになる。
日本経済新聞の試算(18日付)によると、昨年の衆院選の結果に維新案を当てはめた場合、比例と小選挙区と合わせた総獲得議席では〈自民党と立憲民主党が1割以下にとどまるのに対し、比例選出議員の割合が高い公明党や共産党は25%減となった。衆院選で3議席ずつ得た参政党と保守党は両党とも1議席に沈む〉という。つまり、維新案が導入されると、大きな政党の発言力が増す一方で〈幅広い民意をすくい上げにくくなる可能性〉があるのだ。