自民党による世論誘導・情報操作の実例はまだまだある。とくに忘れてはならないのが、「Dappi」問題だ。
「Dappi」とは安倍政権下の2015年秋、Twitter(現・X)に現れたネトウヨ匿名アカウント(開設時期は凍結処分前も含む)。フォロワー数約16万というインフルエンサーだったDappiは野党やリベラル系メディア叩きとあからさまな自民党擁護をおこない、フェイク情報を大量に投稿。それを自民党議員やネトウヨが拡散し、フェイクがSNS上にばらまかれた例は枚挙にいとまがない。
なかでも象徴的なのが2020年10月の投稿だ。森友公文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんについて、Dappiは立憲民主党の小西洋之参院議員と杉尾秀哉参院議員が〈1時間吊るしあげた翌日に自殺〉と投稿。だが、小西・杉尾両議員が近畿財務局の職員と面談した事実はなく、完全なデマだった。
しかし、その後、衝撃の事実が明らかになる。小西・杉尾両議員が発信者情報の開示請求をおこなったところ、Dappiの発信元が個人ではなくウェブ・広告の制作会社であるワンズクエスト社であることが判明。しかも、このワンズクエスト社の社長が、なんと「陰の自民党幹事長」とも称される自民党の事務総長である元宿仁氏の親族であることが発覚したのだ。
小西・杉尾両議員がワンズクエスト社を提訴した裁判では、東京地裁が2023年10月、会社側に計220万円の支払いと問題の投稿の削除を命じたが、この判決で東京地裁は「投稿は会社の業務として、社長の指示の下、ワンズクエスト社の従業員あるいは社長によって行われた」と認定。さらに、投稿者についても「社長の可能性は相応にある」としている。つまり、自民党本部の事務方トップである元宿事務総長が、デマやフェイクによって野党やリベラルメディアを貶める世論工作をおこなうために、自身の親族にアカウントを運営させていた、と見られているのである。
このDappiと自民党の関係については、テレビをはじめとする大手メディアが大きく扱われなかったために周知されていないのが実情だが、本来なら自民党の解党に値するようなとんでもない問題だ。
また、自民党による組織的な情報操作として有名なのが、電通からの提案で始まったとされる自民党のネット対策の特別チーム「Truth Team」(T2)プロジェクトだ。
安倍政権下の2013年参院選挙時、自民党は「T2」を立ち上げ、専門の業者に委託するかたちでツイッターやブログの書き込みなどを24時間監視。自民党に不利な情報があれば管理人に削除要請したり、スキャンダルなどネガティブな情報が検索エンジンに引っかかりにくくさせるための「逆SEO」までおこなった。
「T2」はその後も選挙や対立する政治課題が持ち上がったときに特別な指示を出し、SNS監視や対策を電通にやらせていたといわれており、本サイトの取材では、「2018年の沖縄県知事選挙でも、電通が請け負って子会社の電通デジタルなどがSNS対策をやっていた。あのときは、玉城デニー知事をめぐってさまざまなデマ情報が拡散したが、これらのなかにも電通が仕掛けたものがいくつもある」(自民党関係者)という情報を得ている。