そして、近年「外国人が優遇されている」というイメージを必死に喧伝してきた政治家の筆頭といえば、国民民主党の玉木雄一郎代表だ。
たとえば、玉木代表は今年2月15日に出演した『ウェークアップ』(読売テレビ)で高額療養費制度をめぐる議論の最中、「3カ月、日本にいれば外国人でも高額療養費制度が使えます。外国人の扶養家族もですね」「数万円を払ったら1億6000万円の治療を受けられるというのはね、私は日本の納税者の、あるいは社会保険料を払っている人の感覚からすれば、どうなんだと」などと発言。さらに同日、自身のSNSに〈現役世代が苦労して支払う社会保険料は、原則、日本人の病気や怪我のために使われるべき〉と投稿したほか、自身のYouTubeチャンネルの動画でも「高額な治療を安く受けることを目的に(日本に)来るようなケースをもっと厳格に見たほうがいい」などと主張した。
高額医療費の増加について議論しているのに、唐突に外国人の話題を持ち出し、あたかも日本人が割を食っているかのように問題を転嫁する──。まるで参政党かと見紛う主張だが、そもそも2022年3月から2023年2月までの総医療費9兆871億円のうち外国人の利用は1.4%の1250億円にすぎず、高額医療費制度についても支給額9600億円のうち受給資格をもつ中長期在留者ら外国人の支給額は111億円で、わずか1.1%でしかない。厚労省の担当者も「数字を見ても外国人が特に高額な医療を使っているとは言えない。1億6千万円というのは国内最高額の薬の価格で極端な例だ。あくまで国保は国内に住む人を対象とするのが原則だ」と説明している。(東京新聞2月27日付)。
しかも、2018年から厚労省は国保加入後1年以内の外国人を対象に、医療目的の在留が特に疑われるケースも含めた不適正な利用が疑われる事案を自治体が出入国在留管理庁に通知する制度をスタートさせているが、2018年1月~2023年5月に計34件の通知があったものの、調査の結果、在留資格の取り消しや給付費の返還を求めた事例はなかったという(朝日新聞3月17日付)。
繰り返すが、外国人は日本人と同様、保険料や税金を支払っており、不適切利用を厳格化すべきというなら、そこに国籍は関係ない話だ。にもかかわらず、公共の電波であたかも外国人が高額医療費制度を悪用しているかのように語るとは、外国人に対する偏見の助長にほかならない。もちろん、これらの玉木氏の発言に対しては、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」が抗議文を出し回答を求めたが、玉木氏からはいまだに返事はないという。
本サイトでも指摘しつづけてきたが、玉木氏は2024年5月にも、栃木県日光市で発生した強盗事件でベトナム人男性が逮捕された際に〈過疎地域での外国人による犯罪対策を強化すべきだ。不法残留は厳しく取り締まってもらいたい。そもそも、特定技能は事実上の移民につながるので、なし崩しで拡大してはならない〉と投稿。参政党の神谷代表と同様、外国人と犯罪を結びつけて語り、技能実習生の劣悪な労働環境や搾取の構造を無視して「移民を増やすな」などと主張を展開した。このように玉木氏は排外主義を押し出すことで極右・保守層を取り込み、国民民主党の党勢拡大を図ってきたのだ。
いや、もっと言えば、ネトウヨや極右に支えられた安倍政権では、国会議員による外国人や海外にルーツを持つ人たちに対する差別発言がまかり通ってきた。つまり、今回の参政党ブームによって排外主義が声高に叫ばれるようになる以前から、その下地はつくられてきたのだ。