このように、斎藤氏が折田氏側へのSNS運用に対する報酬を認めた場合は買収罪にあたる可能性が高いため、昨日22日夕方あたりまでは、斎藤氏も折田氏も「無償のボランティアだった」と主張するのではないか、と見られていた。その結果、ネット上ではまるで布石を打つように、折田氏が〈(斎藤氏の広報・SNS戦略を)東京の大手代理店ではなく、兵庫県にある会社が手掛けたということもアピールしておきたいです〉とも記述していたことを踏まえて「仮に折田氏が無償でも、従業員に選挙の仕事をやらせて給与を支払っていればアウト」など先を見越した指摘までおこなわれていた。
ところが、前述したように昨日午後になって斎藤知事は折田氏の会社とのかかわりについて問われると「一定のサポートをいただいた」としながらも「法に抵触することはしていない」と疑惑を否定。斎藤知事の代理人弁護士も、「(SNSの)デザイン、色使いなどについて意見をいただくこともあった」としつつも、「SNS戦略の企画立案などについて依頼をしたというのは事実ではありません。あくまでポスター制作等法で認められたものであり相当な対価をお支払いしております」と述べた。
つまり、折田氏側への支払いを認めながらも、それはポスター作成料といった法で認められた対価であり、問題のSNS運用については依頼していない、と主張したのだ。
ここまで紹介してきたように、折田氏は「斎藤氏が私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただいた」と述べ、斎藤氏が折田氏のオフィスでSNS展開の提案について説明を受けている写真まで投稿している。実際、この写真に写っているパソコンモニターには「兵庫県知事選」「SNS戦略」という文字が確認できる。だが、斎藤氏側は「そもそも企画立案なんて依頼していない!」というのである。
まるで斎藤氏側の主張は「折田氏が自らの手柄を誇大に言いふらした」と言わんばかりだが、しかし、この主張を額面通りに受け取ることは難しい。
たとえば、折田氏は「note」への投稿だけではなく、自身のYouTubeチャンネル「かえで社長─ズバッといってこチャンネル─」の動画内でも兵庫県知事戦に言及。選挙期間中に収録された動画では、生き生きとこう語っていた。
「兵庫県知事選挙が今週の日曜日17日にあるんですけれども、ちょっとそれにかかわってまして、激忙しい日々を過ごしております」
「広報全般を任せていただいておりまして、ポスターをつくったり、ビラをつくったり、SNS運用をやったり、YouTube運営をやったり、本当にこう選挙って広報の総合格闘技やなっていうふうに思うんですけど、その格闘技の最前線で(パンチを繰り出すようなポーズをとりながら)こうやっている感じで、毎日寝れない感じですね」
つまり、折田氏は選挙後に手柄を誇示すべく「私が広報全般を任された」「SNS運用をやっている」と主張しはじめたわけではなく、選挙期間中から同じことを喧伝していたのだ。なぜ斎藤陣営はその時点で「虚偽を流布するのはやめて」と注意しなかったのだろうか。