さらにもうひとつ、とんでもない費用増を生み出すことになるのが確実なのが、万博やIRへのアクセスルートとして大阪市が整備している高速道路「淀川左岸線」2期工事だ。
「淀川左岸線」2期工事をめぐっては、2020年に松井市長が菅義偉官房長官(当時)と面会。万博会場への交通アクセスを向上させるため、淀川左岸線2期工事を前倒し、早期整備を図るために必要な財政支援を要望した。
しかし、この工事はその後、とんでもない展開を見せる。「淀川左岸線」2期工事は当初、総事業費を1162億円としていたのだが、2020年11月になって大阪市が土壌汚染対策などが必要になったとして、最大700億円増の1800億円超に上る見通しであることが明らかになったのだ。
ちなみに、この際、松井市長が党利党略のため費用増を隠蔽したのではないかという疑惑も持ち上がった。というのも、松井市長は2020年7月には費用増が見込まれることを市の担当者から報告を受け、同年9月には国交省にも報告されていたのに、この事実を市が公表したのは11月。大阪「都構想」住民投票を実施した後のことだった。ようするに、松井市長は住民投票が不利にならないよう、さらなる負担増となるこの情報の発表を意図的に遅らせた可能性がある、ということだ。
しかし、「淀川左岸線」2期工事の費用増はこれで終わらなかった。2022年には地盤異常に対応するため工法の変更が必要となり、1000億円近い追加費用がかかることが明らかに。同時に、完成時期が予定より最大6年遅れることが判明。万博に間に合わなくなったため、本線とは別に万博へのシャトルバス専用の仮設道路が暫定的に必要となり、その工事費としてさらに50億円がかかることになった。
結局、合計で1039億円が追加されることになり、「淀川左岸線」2期工事の事業費は当初の2.5倍となる約2957億円にまで膨れ上がってしまったのである。
しかも、この2957億円は、国が約1600億円、大阪市が約1300億円を負担することになっている。
いかがだろうか。問題となっている万博の会場建設費2350億円や「日本館」「大阪ヘルスケアパビリオン」などの建設費に、ここまで説明してきた夢洲のインフラ整備、IR予定地の土壌対策費、高速道路の整備費などを合計すると、なんと、維新がゴリ押ししてきた大阪万博・IRには、8000億円以上の公金が投入されることになるのだ。
しかも、ここにさまざまな関連事業の費用が加わり、さらなる工事費の上振れが発生していけば、万博・IRに注がれる公金が1兆円を超えることは十分考えられる。
前述したように、維新や松井市長らは一部の事業の財源を「造成した土地の売却・賃料収入等の港営事業会計」であることを強調し「府民・市民の税で負担するものではない」と言い張っているが、これもごまかしだ。港営事業会計は直接税金ではないというだけで市の借金である。しかも、ここまであげてきたインフラ整備の多くは、港営事業会計だけでなく、大阪市の一般会計から拠出されるものも2000億円以上ある。つまり、2000億円以上の大阪市民の税金が注ぎ込まれるということだ。さらに、万博関連のインフラ整備には、国費からも3500億円以上が投入され、そのかなりの部分は国民からの税金が使われるのである。
なぜこんな暴挙が許されるのか。そもそも、大阪万博で「税金の無駄遣い」が起こっているのは、インフラ整備に巨額が必要となることがわかっていた夢洲を会場としたことにも起因している。夢洲での大阪万博開催は、事実上、当時大阪府知事だった松井一郎氏によるトップダウンで決定したものだが、それはカジノだけでは税金投入に反対意見が出るため、万博という大義名分を使ってインフラ整備を図ろうという算段だったからだ。
無茶苦茶な話だが、しかし、それがいまゴリ押しされ、国民に多大な負担が押し付けられようとしているのだ。
維新は必死に「万博は未来のレガシー」「大阪IRで経済が活性化」「万博の経済効果は2兆円」などと喧伝しているが、こんな誤魔化しにだまされてはならない。いますぐ万博と大阪IRを中止に追い込み、夢洲を万博会場にゴリ押しした松井氏らを含む維新幹部の責任を徹底的に追及する必要がある。
(編集部)
最終更新:2023.11.28 07:31