そのとんでもない無駄遣いぶりを、もう少し詳しく見てみよう。
まず、大阪万博では、交通アクセス確保のために、大阪メトロ中央線を延伸して夢洲の万博会場に隣接するかたちで夢洲駅を新設するが、これにも税金が投入されるうえ、工事費が会場建設費と同様、どんどん膨れ上がっている。
当初は延伸と駅の新設で約540億円の工事費とされていたが、地中障害物の撤去やメタンガス対策により約96億円かかることが判明。さらに、駅の構造強化や通路拡幅などで33億円が必要となり、現時点で費用は669億円までアップしている計算だ。しかも、費用のうち、IRや鉄道事業者が負担するのは一部で、昨年11月時点の大阪市の説明では国費から88億円、大阪市の一般会計(税金)から88億円、同じく大阪市の港営事業会計から273億円。合計すると450億円の公金が投入されることが決まっていた。
夢洲駅をめぐっては、周辺整備にも費用が発生している。改札前広場やエレベーターの設置について、市は当初、税金は使わず、事業者を募集して負担させるとしていた。ところが、公募しても応募事業者は一社もなし。その結果、これも市が約30億円をかけて整備することになってしまったのだ。
さらに、大きいのは、万博開催予定地のそばで開業予定のIR、カジノ建設をめぐる費用にかんする負担増だ。
IRの建設予定地である夢洲は廃棄物の最終処分場だったため、当然、汚染土壌の改良が必要になるが、その対策に788億円がかかることが2021年に判明したのだ。
IRをめぐっては、当時大阪府知事だった松井一郎氏が2016年におこなわれた説明会で「IR、カジノに税金は一切使いません。民間事業者が大阪に投資してくれるんです」と断言していたが、この事実が発覚すると、788億円を上限に土壌対策費を大阪市が負担することを決定してしまった。これまで大阪湾の埋め立て用地の販売でその対策費を市が負担したことはなく、これは異常な対応としか言いようがない。
大阪市はカジノ用地の土壌対策費について一般会計でなく港営事業会計から拠出することを強調。「府民・市民の税で負担するものではなく、造成した土地の売却・賃料収入等により事業を実施している特別会計の港営事業会計で負担することとしており、賃料収入等で回収していく」と説明している。
だが、市が事業期間の35年で見込む賃料収入は計約880億円。しかし、港営事業会計からは788億円のほかにも、前述の夢洲駅延伸工事や土地造成、道路工事、下水道整備などに400億円以上が使われることになっている。ほんとうにすべて港営事業会計で賄えるのか、疑問の声が噴出している。
しかも、土壌対策はこの788億円だけで終わらない可能性がある。IR開業後に施設拡張がおこなわれる場合、やはり土壌対策費として約257億円の公費負担が必要だと市が試算している。
そのうえ、〈万博跡地の一部は「国際観光拠点」とする計画で、市は跡地にもIR予定地と同様の対策をした場合、同程度の約766億円が必要と試算する〉(毎日新聞11月7日付)というから、今後、合わせて1000億円が必要になる可能性があるということだ。
さらに問題なのは、この土壌対策費には地盤沈下のための対策費が含まれていないこと。現状は地盤沈下の対策はIR事業者が実施することになっているが、今年9月に大阪府市と事業者が締結した協定では「市が使用した埋立材が原因で通常の想定を著しく上回る大規模な地盤沈下や陥没が生じた場合」は市が費用を負担するとしているのだ。
夢洲は廃棄物の最終処分場として大阪市が埋め立てて造成した人工島であり、すべての埋立材は市が使用したものにほかならない。大規模な地盤改良工事をおこなった関西国際空港でさえ地盤沈下をつづけていることを考えれば、巨額の地盤沈下対策費の負担を市が迫られる可能性は高いだろう。
しかも、だ。府市とIR事業者が締結した協定では、事業者が違約金なしで撤退できる「解除権」が3年間延長された。つまり、土壌対策などに巨額を投入したあとに、IR計画がご破産となる可能性まで出てきているのだ。