そもそも、年5兆円もあれば、かなりの少子化対策を打つことができる。東京新聞のまとめ(6月3日付)によると、「大学授業料の無償化」は1.8兆円、「児童手当の高校までの延長と所得制限撤廃」は1兆円、「小・中学校の給食無償化」は4386億円で可能。つまり5兆円でもお釣りが出るのだ。
少子化を「国難」と呼んでおきながら、子ども・子育て支援への公的支出を出し渋り、先進国でも最低水準。そんな国が、国民に負担を押し付けてまで防衛費を大幅増額させて、アメリカ、中国に次ぐ世界3位の軍事大国を目指す──。こんな税金の使い方、許されるわけがないだろう。
こうした反発を抑えるためか、ここにきて岸田政権は、出産時に子ども1人につき原則42万円が支払われる出産育児一時金について来年度から50万円程度に引き上げる方向で検討に入ったとし、近く岸田首相が直々に引き上げ額を表明するという。だが、東京都では公的病院でも出産費用に平均56万5092円もかかっている上、妊婦健診の自己負担や出産・育児用品代などを考えれば、出産時の一時金ではまったく不十分だ。
しかも、この一時金増額の財源を、岸田政権は75歳以上の高齢者が支払う医療保険料の上限引き上げによって賄おうとしている。この保険料上限引き上げは年金収入が153万円超の中所得者も対象となっており、75歳以上の約4割が負担増となる見通し。じつに1人あたり4000円もの引き上げだ。
物価高騰で国民生活が危険に晒されているというのに、高齢者から金をむしり取り、少子化対策のための出産育児一時金の財源に充てる。岸田政権は来年の通常国会で介護サービス利用者にさらなる負担を強いる介護保険制度の改悪も狙っているが、まさに鬼畜の所業としか言いようがない。
国民の生活苦、そして少子化という危機的状況を無視して推し進められている防衛費の増額。戦前回帰のこの方針に反対の声をあげなければ、国民は負担を押し付けられ、あらゆる意味で後戻りできない事態へと陥ることになるだろう。
(編集部)
最終更新:2022.12.08 11:31