岸田首相は、6月14日におこなわれた参院内閣委員会で「子どもを支えるために社会全体で議論をおこない、その積み上げによって予算倍増を目指す」と明言。9月7日には岸田首相が本部長を務める「全世代型社会保障構築本部」ではこの国の少子化を「危機的な状況だ」と言及。11月24日の同会合でも「こども予算の倍増を目指していく」と述べたばかりだった。
ところが、肝心の子ども関連予算の財源はいまだに白紙状態。〈議論は年明け以降に先送りされる見通し〉(毎日新聞11月27日付)だというのだ。
昨年、出生数が過去最少の81.1万人となったが、2022年にいたっては、ついに出生数が80万人を下回る見込みとなっている。一方、日本の子ども・子育て支援への公的支出は先進国のなかで最低水準にある。実際、経済協力開発機構(OECD)が10月3日に発表したデータによると、日本のGDPに占める教育機関への公的支出の割合(2019年時点)は、OECD平均の4.1%を大幅に下回る2.8%。データのある加盟37カ国中なんと36位で、日本はワースト2位という結果だった。
賃金は一向に上がらず、子育て支援も不十分。これでは少子化が進むのも当然だが、このような惨状であるにもかかわらず、防衛費を年5兆円増額する議論が優先され、子ども関連予算の財源についての議論は置き去りにされているのだ。
少子化を「危機的な状況」だと認めながら、抜本的な改革は何ひとつ打ち出さない。いや、それどころか、最近は保育所での置き去り事故や虐待事件などが問題になっているが、かたや保育士1人が見てよい子どもの数を定めた国の「保育士の配置基準」の見直しは、予算が確保できないという理由で進んでいないという現実まである。
安倍政権下の2015年に実施された「子ども・子育て支援新制度」では、1歳児と4~5歳児の配置基準見直しなどに3000億円を確保すると約束していたが、いまだに実行されず(朝日新聞12月4日付)。NHKの取材に対し、内閣府側は「1歳児と4・5歳児については安定財源の確保が課題となり、毎年度予算確保に取り組んでいるが、実現できていないのが現状」と回答している。防衛費の増額をあっさり指示しておきながら、子どもたちの安全を確保するための重要な予算は「確保できない」というのである。