また、仮に、夏野氏がKADOKAWAの贈賄について、幹部2人が逮捕されるまで本当に知らなかったとしても、同氏には倫理的に責任を問われなくてはならない大きな理由がある。それは、夏野氏がメディアやSNSで、こうした不正の温床となり、自社も犯罪に手を染めていた東京五輪の旗振り役をつとめてきた、という事実だ。
夏野氏は2014年に東京五輪組織委の参与となり、“パクリ疑惑”によって撤回されたあとのエンブレム委員会やマスコット審査会、チケット委員会、メダル委員会などを歴任。メディアに登場した際もさかんに東京五輪開催の意義を語ってきた。
そして、周知のように、東京五輪に反対する国民の声を、とんでもない「暴言」で封じ込めようとした。
新型コロナの感染拡大渦中の東京五輪の開催強行をめぐって、反対の声が広がるなか、夏野氏は『ABEMA Prime』(ABEMA)で「そんなクソなね、ピアノの発表会なんか、どうでもいいでしょう、五輪に比べれば。それを一緒にする、アホな国民感情に、やっぱり今年、選挙があるから乗らざるを得ないんですよ」などと発言。大きな批判を浴びたのである。
このとき本サイトでは、東京五輪オフィシャルサポーターとしてKADOKAWAが利権に食い込んでいることを挙げ、夏野氏は五輪開催強行によって自分の会社の利益を守りたいために開催に反対する一般市民を攻撃しているのだと批判をおこなった。
だが、今回、KADOKAWAの贈賄が事件化したことで、夏野氏のこの発言にはもっと下劣な意味合いが付与されたことになる。自分が社長を務める会社が不正に手を染めて利権を獲得しているイベントを擁護するため、公共のメディアを使って反対意見を封じ込める暴言を吐いたことになるからだ。
その上、夏野氏をめぐっては、ここにきてさらに、もっとひどい暴言も発掘されている。
それは、2017年に「ニコニコ生放送」で配信された東浩紀氏と三浦瑠麗氏、津田大介氏との鼎談「安倍離れ?内閣改造について言いたい事を言う生放送」でのこと。このなかで東氏が「オリンピックで羽田の侵入経路が緩和されて五反田の上に(飛行機が)通るんだって。これに反対してる(人たちがいる)わけ」と言うと、夏野氏は飲んでいたワインのつまみであるチーズの包装を破きながら、こんなことを口にするのだ。
「その航路を開くときに、取り合えずB-2爆撃機でそのへん、絨毯爆撃したらいいよ。そいつら全員コロせ。いらねえよ」
東京五輪に伴う新飛行ルート運用に反対する市民に対し、あろうことか組織委参与の立場にあった夏野氏が「絨毯爆撃したらいいよ」「そいつら全員コロせ」と言い放つ──。絶句せざるを得ない暴言中の暴言であり、いまメディア企業のトップに立っていること自体が許されない発言だろう。