内閣官房HP(Twitter)より
新型コロナの感染拡大から2年以上が過ぎ、政府がこれまでのコロナ対策について検証する有識者会議を設置。11日に初会合が開かれた。
そもそも、この期に及んで検証とは遅きに失したとしか言いようがないが、それでも安倍政権によるPCR検査抑制や感染拡大の要因となったと見られる菅政権の「GoTo」キャンペーンごり押しや東京五輪の強行開催など、検証すべき事柄は山ほどある。
だが、こうした失政の問題点が検証されることはほとんどないだろう。というのも、メンバーのなかに社会学者の古市憲寿氏が含まれていたからだ。古市氏は初会合後、記者団に対して「この会議を通じて2年間の新型コロナ対応を後世に残す意味は大きい」などと語ったらしいが、「どの口で、そんなことが言えるのか」という声が上がっている。
何しろ、古市氏といえば、この間、ワイドショーに出演しては新型コロナを軽視して“経済を回せ”と主張し、安倍政権や菅政権が打ち出した「愚策」を後押しする発言を繰り返してきた人物。有識者として客観的な検証をおこなえるとは到底考えられないのだ。
その一例が、古市氏がワイドショーで展開した、安倍元首相がぶち上げた世紀の愚策である「アベノマスク」擁護だ。
ご存知のとおり、アベノマスクをめぐっては約8300万枚(約115億円相当)が配布されずに倉庫で保管され、保管料として年間6億円が支出されていることが昨年10月に発覚。これほどの税金の無駄遣いがあるかという話だが、2021年10月28日放送の『めざまし8』(フジテレビ)で、古市氏はこんなことを言い出したのだ。
「マスクって備蓄できるじゃないですか。次のパンデミックがいつ起こるか分からない状況の中で、アベノマスクって当時批判もありましたけど、結局マスクみんな欲しかったわけですよね。だったら次のパンデミックのために一定数を備蓄しておくことはむしろ必要じゃないかなって思います」
言っておくが、当時から不織布マスクに比べて布マスクは感染防止効果が圧倒的に低いと指摘されており、アベノマスク配布は国内外で失笑された。その上、倉庫での保管に年間6億円も投入されていたのだ。学者を名乗るのであれば、感染防止効果が低い布マスク配布を最優先で打ち出し、巨額予算を注ぎ込んだことの政策的妥当性を問うべきだが、ところが古市氏は「備蓄はむしろ必要」などと擁護したのである。
しかも、古市氏は、希望者にアベノマスクを届けるために必要な配送費が10億円にのぼるという試算が報じられた今年2月にも、「2年前にほかにどんな手があったのかなって思う」とコメントし、こう主張した。
「マスク不足で、しかも日本は資本主義、自由主義の国ですから国が強制的にマスクを買い上げるってことはしたくなかった。そこで業者からマスクを放出してもいいと思えるぐらいに、マスクを流通させるってことをするためにマスクをつくるってことは、当時としてはそんな間違った判断ではなかったのかなってことは思います」
これは「(アベノマスクによって)いままでためられていた在庫もずいぶん出た」という安倍元首相の主張とまったく同じものだが、品薄が解消されたのは中国製マスクの輸出が回復したためだ。しかも、2020年6月下旬の時点ですでにマスクの品薄状況が解消され、使い捨ての不織布マスクが価格も下がって市中に出回っていたにもかかわらず、政府は約5800万枚もの布マスクを新たに発注していたのだ。だが、古市氏はこうして政府が無駄に無駄を重ねてきた事実を指摘せず、ネトウヨが喧伝してきた「アベノマスク配布によって業者が在庫を放出した」という主張を繰り広げたのだ。