しかも、その正月特番における吉村知事の取り上げられ方は、これまでの吉村知事のコロナ対策について鋭く切り込むわけでも、死亡者数ワースト1という重大問題を指摘するでもなく、ただただ「大スター」であるかのように扱いつづけたのである。
たとえば、テレビ朝日系の朝日放送が1月3日に放送した『2022年は吉か?凶か?爆願!生ニュース大明神』では、司会の赤江珠緒が「積極的なコロナ対策で支持を集めた吉村知事」と紹介し、コーナーVTRを放送。そのVTRのナレーションは、こんなふうにはじまる。
「新型コロナウイルスの影響で未曾有の危機に瀕したニッポン。そんななか、吉村知事は、感染状況を示す独自の基準『大阪モデル』を設けるなど、コロナ対策で手腕を発揮!」
本サイトでは何度も指摘してきたが、「大阪モデル」は感染状況が悪くなるたびに吉村知事が恣意的に基準変更しつづけてきたシロモノでしかないのだが、あ然とさせられたのは、そのナレーションが読み上げられた画面上には、デカデカと「「大阪モデル」などで被害を最小化」と打ち出されていたことだ。
被害を最小化!? 死亡者数ワースト1で? ……もはや言葉を失うほかないが、すごいのはこのあと。VTRでは「コロナ対応で評価する政治家」のランキングで見事1位に輝いただけではなく、「総理大臣になって欲しい人」アンケートでも「国会議員でもないにもかかわらず堂々の4位に」などと紹介。選挙時に街頭演説で聴衆に手を振る吉村知事の映像にナレーションで「コロナ禍の窮地ながら吉村知事の評価は鰻のぼりに!」とかぶせたあとに街の声を流したのだが、それはこのようなものだった。
「頑張ってくれている。大阪の希望」
「維新が独占している状況も吉村さんがつくっている。大阪ではスーパースターですからね」
そして、ナレーションは「一方、吉村知事の評価とは裏腹に大阪はコロナで致命的な状況に」と言い出し、外国人観光客の減少、地下変動率の下落、倒産件数やコロナ関連経営破たん数、完全失業率が全国ワースト2位となっていることを紹介。ここで再び街の声を流したが、それも「吉村さんは言葉はうまいけど、もうちょっと頑張ってほしい」というものだった。
言うまでもなく、大阪の経済が悪化しているのはインバウンドに頼り切ってきただけではなく、感染を抑え込むことこそが最大の経済対策であるというのに吉村知事がそれを軽んじてきた結果だ。だが、番組では「吉村知事の評価とは裏腹に大阪経済が致命的な状況に」などとし、経済悪化を吉村知事の責任から切り離すかのように伝えたのだ。
もちろん、スタジオでのトークでも、吉村知事は「コロナ対策に明け暮れた1年だったなと思います」「社会経済のバランスと感染を抑えるバランス、本当に難しいけど追及していきたい」などと、「お前が言うか」とツッコミを入れずにはいられない発言の連続だったが、何か指摘するような者はスタジオには誰ひとりおらず、それどころか大阪・関西万博の話題に移ると、「空飛ぶクルマ」だの「乗るだけで10歳若返るためのアドバイスがもらえるあアトラクション」の紹介をはじめる始末。