実際、つい1週間前には、きのう口にしたこの新たな方針を吉村知事自身が否定していた。
1月末の時点で大阪ではすでに軽症中等症病床の使用率が80%を超えていたのだが、1月31日の囲み会見で吉村知事は「できるだけ早く入院をしてもらって早く治療をするということが重要」と強調し、「極論を言えば『中等症2で酸素が必要な方だけ入院』という入院基準をつくったら病床使用率は一気に下がってくると思うが、それはやるべきじゃないと思う」と語っていたのだ。
つまり、この発言からわずか1週間で「極論」を選択するという異常事態に陥ったというのに、この期に及んで「入院がまったくできないという状況ではない」「『入院が本当に必要な方をお願いします』という意味で中等症2以上(に絞る)」と言い募ったのである。
あたかも適切な医療提供体制を維持しているかのように語ることで、自分の責任問題を回避しようとする──。姑息・卑劣としか言いようがないが、これこそ吉村知事の常套手段だ。
実際、吉村知事はこれまでもコロナで大阪が東京を上回る死者を出していることについて「とくに大阪は高齢化が進んでいる」「大阪は3世代同居率が高く、高齢者施設も多い」などとデタラメ強弁をしてきたが、2日にリモート出演した『キャスト』(朝日放送)では、「昨日も18人が亡くなった。どうして高齢者に感染が広がっているのか、どうしてそこを抑え込めないのか」と問われると、吉村知事は事も無げに「いや、これは全国的だと思います」と返答したのである。
言っておくが、大阪の死亡者数は「全国的」などと言えるような数字ではない。事実、1月1日〜2月6日までの死亡者数は、東京が64人であるのに対し、大阪は138人。なんと2倍以上になっているのだ。つまり、大阪は全国でもずば抜けて死亡者数が多いというのに、吉村知事は高齢者の死亡例が増加しているのは「全国的」だと矮小化したのだ。
だが、これほどの異常な状況に陥っているのは、全国でも大阪だけだ。感染者数も人口比では東京を超えて大阪がダントツのトップであり、死亡者数も大阪はワースト1。さらに、1万件を超える入力漏れが発生し、ついには国の入院基準を維持できず、基本的に中等症2以上でなければ入院できない状況に突入したのだ。