脇田座長は前述したように、「若者は検査しない」「病院を受診せず家で寝ていろ」と言い出した理由のひとつとして「検査のキャパシティには限界がある」と語ったが、その元凶は岸田文雄首相の失策だ。
岸田首相はあれだけ「検査の拡充」を総裁選時から掲げていたというのに、実際には、政権発足後から現在にいたるまで検査のキャパはほとんど伸びていない。事実、「岸田政権になって検査キャパが増えていない」という問題は、前厚労大臣である田村憲久氏も認めている。
というのも、19日放送の『報道1930』(BS-TBS)では、日本共産党の小池晃・参院議員が「現在の検査キャパは38〜39万」「検査キットが足りなくなってきている」と指摘した際、田村前厚労相は「1日の検査能力という意味からすると、私が大臣だったときから比べると数倍、十倍近くになったと思う。私が大臣だったときは5〜6万だった気がする。かなり増えている」と強弁したのだが、小池議員はすかさず「田村さんが大臣終わる頃、1日いくつだったんですか?」と質問。すると、田村前厚労相は「……30数万です」と答えたのだ。
そして、これは事実だ。岸田政権は昨年10月4日に発足したが、厚労省が発表した同日の「1日あたりのPCR検査能力」は33万5815件だった。対して最新のデータである1月18日時点の「PCR検査能力」は、38万5181件。つまり、たったの5万件しか増えていないのである(さらにいえば、直近である1月21日の空港・海港検疫含むPCR検査実施人数は約19万件なので、実際におこなわれた検査数は検査能力よりもずっと少ない)。
つまり、岸田首相は「検査を拡充する」と喧伝してきたというのに、それは口だけで、PCR検査のキャパシティを抜本的に増やそうともせずサボってきたのが実態なのだ。その結果、この感染拡大の最中に「若者には検査させない」という暴論を生み出し、さらには「受診せずに家で寝ていろ」という事態に陥りそうになっているのである。
検査だけではない。感染が拡大している自治体では保健所業務がパンクし、大阪府では重症化リスクが高い人以外は濃厚接触者を特定する調査を取りやめるなどの動きが出てきている。これは自治体が保健所職員の増員を含む体制拡充を怠ってきた結果でもあるが、前出『報道1930』では、小池議員が「(国の)来年度予算では保健所にほとんど手当がついていない」「これまでの仕組み以上のものはない」と指摘。つまり、岸田政権は感染拡大を見越した対策のための予算措置もしてこなかったのだ。
前述したように、分科会メンバーの小林氏は「みんなが家から出なければ感染は収まるが、経済を止めることによって生活に困窮して亡くなる人が出る」と述べて分科会の「人流抑制より人数制限」という方針を正当化したが、この問題にしても、そもそも生活困窮者を自殺に追い込んでいるのは、手厚い補償や迅速な支援をおこなおうとしない岸田首相の失策であり、完全な政治責任だ。
安倍・菅政権の酷さと比較して「岸田政権はまだまし」などと評価する声は大きいが、まったくそんなことはない。専門家の暴走を生み出した大元に岸田政権のコロナ失策があることは、もっと強く批判されるべきだ。
(編集部)
最終更新:2022.01.22 05:41