そもそも、大阪での高齢者施設クラスターの報告はいまにはじまった話ではなく、第1波のときから高齢者施設の感染防止策の強化は全国で叫ばれてきた。実際、東京都の世田谷区は昨年10月から介護事業所などを対象にしてスクリーニング検査をおこなうなどの対策を打ち出していた。
だが、吉村知事は高齢者施設におけるクラスターを抑止する抜本的な感染防止策を打ち出さず、高齢者施設の職員や入所者を対象に、症状が出た際に病院や保健所を通さずに無償で検査が受けられる「スマホ検査センター」を府内12カ所で開設したのは、今月21日になってのこと。あまりにも遅すぎる上、いま必要なのはスクリーニング検査の徹底であるはずなのに、松井一郎市長が発表したのは市内の高齢者や障がい者施設などの職員に対する2週間に1度のPCR検査の実施。施設利用者である高齢者は含まれていないのだ。
全国最多の死亡者数を叩き出しながら、実際には東京のほうが約93万人も高齢者人口は多いのに「とくに大阪は高齢化が進んでいる」などと強調し、挙げ句、いまだに徹底した感染防止策を打ち出さない──。行政の長としての責任、危機感がまるでないとしか言いようがないだろう。
いや、そればかりか、吉村知事はこの期に及んでも「大阪市を維持しながら二重行政が生じない体制をつくる必要がある」などと言い、市の権限と財源を府に差し出すという「都構想」住民投票で否決されたものを条例で実現させようとする「広域行政の一元化」条例の制定に血道を上げている。実際、本日付のNHKニュースは「公明党が賛成する方向で調整に入った」と伝え、来月からはじまる府議会と市議会で可決される公算が大きくなったと報じた。
コロナによって行政サービスがガタガタであることがここまであきらかになったというのに、死者数全国最多の責任も放り出して、住民投票の結果を骨抜きにする条例制定にかまける吉村知事。この男のせいで大阪は「行政が脆弱な恐怖都市」と化しているのである。
【2021.01. 27初出】
(編集部)
最終更新:2021.12.22 09:16