数十億にものぼる事務費をかけているにもかかわらず、支給のスピードは全国で最低……。しかも、この支給の遅れの原因は、パソナに丸投げしたことにあった。大阪商工団体連合会(大商連)が6月23日に大阪府と交渉をおこなった際、府側は遅れの原因について「審査現場を担当する府の職員が2月当初2、3人しかいなかった」と説明。さらに府の担当者は、パソナに委託しているため「(パソナ側に)直接指導することは偽装請負になるためできない」「私たちは委託業者からの相談を受けて判断するという配慮をしている」と述べたという(しんぶん赤旗2021年7月1日付)。
さらに、この時短協力金の支給業務にかかわっていたパソナの元契約社員が、府に対して意見書を提出。この元契約社員は当時の状況について「2月に書類不備とされた協力金の申請書が、4月になっても放置されていた。3月分の不備書類は手が付けられていない状態だった」「連絡が来ないという業者さんの声もあるが、放置していたから連絡が無かったといえる」とし、また書類放置の背景について「パソナ側が協力金支給のノウハウ(包括電算処理業務の経験)を持っていなかったことが大きな理由」と指摘。そして、「ノウハウが無いのにどのように積算(委託にかかる費用の算出)をしたのか」と、パソナへの委託費用の積算根拠自体にも疑義を呈したというのだ(前出・しんぶん赤旗)。
業務にあたったスタッフ自身が「パソナ側にノウハウがなかった」「ノウハウがないのにどうやって委託費用は積算されたのか」と疑問を投げかける──。これを税金の無駄遣いと言わずして何と言おうか。
だが、吉村知事に突き刺さったブーメランはこれだけではない。吉村知事は岸田政権のクーポン事務費問題について、「政策の理念が見えず、クーポンにする必要がよく分からない」と言ったが、吉村知事も現金で支給すればいいものを「メッセージ付きQUOカード」という意味不明の政策を実行した前科がある。
吉村知事は昨年4月、「(コロナの)最前線で戦っている人を応援したい」と言い出し、ふるさと納税を活用して全国から集めた寄付で基金を創設、コロナ患者に対応する医療従事者やホテル従業員らに「応援金」を配布すると発表した。だが、同年5月からの支給で配られたのは、現金や電子マネーではなくQUOカードやQUOカードPay、そして謎のメッセージカード。そこには「大阪府知事 吉村洋文」の署名で、〈皆様への感謝の気持ちを形にできないかと、大阪府で寄付を募りました〉〈お送りするのはお金ではなく、感謝の気持ちです。ありがとう。感謝です〉などと書かれた吉村知事直筆のメッセージも印刷されていた。
金券よりも現金のほうがありがたいのは当たり前だが、そもそも人々の寄付で支援金を支給するというのに、まるで吉村知事のPRのようなメッセージカードまで付けるとは……。当然、この贈呈方法の決定には「なぜ現金ではないのか」という疑問の声があがったが、対して吉村知事は「(QUOカードのほうが)早く処理できる」と説明していた。