いや、野党や反対勢力だけではない。松坂桃李が内調に出向する官僚役を演じた映画『新聞記者』でも描かれていたが、北村氏率いる内調は“安倍の私兵”として、官僚や自民党議員の監視もおこなっている。2017年には韓国・釜山総領事だった森本康敬氏が更迭されたが、これは森本氏がプライベートの席で慰安婦像をめぐる安倍政権の対応に不満を述べたことを内調がキャッチ。官邸に報告した結果だったと言われる。
2017年に加計学園をめぐる「総理のご意向」文書を“本物”だと証言した文科省元事務次官の前川喜平氏に対して仕掛けられた「出会い系バー通い」スキャンダルも、映画『新聞記者』とまったく同じで、もとは公安が調査してつかんだものだった。このとき、前川氏に脅しをかけたのは杉田官房副長官だったが、読売新聞や週刊誌に情報を流したのは、北村氏率いる内調だったと言われている。
さらに、驚いたことに内調の謀略は同じ与党の自民党議員にも向けられていた。2018年の自民党総裁選では、内調のスタッフが全国で票の動向や“演説でウケるネタ”などを探っていただけでなく、安倍首相の対立候補だった石破茂氏の言動の“監視”もおこない、官邸に報告をあげていたという。
そして、極めつきは、安倍官邸御用達ジャーナリスト・山口敬之氏による伊藤詩織さんへの性暴力事件もみ消し疑惑への関与だ。
周知のように、この問題は2017年に「週刊新潮」(新潮社)がスクープしたのだが、記事が掲載されると知った山口氏が北村内閣情報官にもみ消し相談をおこなっていた疑惑が続報で暴かれてしまったのだ。
きっかけになったのは、山口氏が「北村さま」という宛名で〈週刊新潮より質問状が来ました〉〈取り急ぎ転送します〉と書いたメールを「週刊新潮」編集部に誤送信したためだった。北村氏は「週刊新潮」の直撃に「お答えすることはない」と言っただけで否定しておらず、「北村さま」が北村氏であることは間違いないだろう。
また、山口氏が「週刊新潮」に誤送したメールに、なんの挨拶や前置きもなかったことなどから、山口氏と北村氏は以前から非常に近しい関係にあり、かなり前からこの問題について相談していたことも伺えた。