直接の支持も取り付けられなかったというのに、一貫して安倍前首相に尻尾を振りつづけた岸田氏。しかも、決選投票での密約や、高市氏が国会議員票をとったことで、この安倍氏の支配はさらに強化されるだろう。
当然、党役員人事や組閣では安倍前首相の意向を汲んだ人事がなされることは必至。敗れた高市氏を幹事長や官房長官、重要閣僚で登用せざるをえなくなっていると言われている。
いや、人事だけではない。安倍前首相は岸田新総裁決定後、高市陣営の会合で「高市氏を通じ、自民党がどうあるべきかを訴えることができた」「(高市氏が)確固たる国家観を示した」とした上で、「次の衆議院選挙、今度は岸田新総裁のもとに、共に勝ち抜いていこうではありませんか」と力を込めて呼びかけた。この発言からも、今回、高市陣営が打ち出した「国家観」とやらを岸田氏が政策に落とし込まざるを得なくなるはずだ。
選択的夫婦別姓、女系天皇の否定はもちろん、岸田氏が「任期中にめどをつけたい」と言っている改憲をめぐっても、高市氏は私権制限の明確化にまで踏み込んでおり、その方針がさらにエスカレートする可能性がある。
ようするに、岸田新首相の誕生は、菅政権以上に安倍前首相の存在感が増した「安倍政権の復活」でしかなく、自民党の刷新どころか、安倍・菅政権の総括もなく膿を溜め込んでいくだけになるのは間違いない。
だが、忘れてはいけないのは、これはしょせん自民党総裁を決める党内の選挙に過ぎないことだ。きたるべき衆院選で国民がNOを突きつければ、この「安倍政権の復活」は止めることができる。次の選挙は、安倍政治に終止符を打つための選挙であることを野党は徹底して訴えていく必要があるだろう。
(編集部)
最終更新:2021.09.29 10:36