「DHCテレビジョンが何をしたのかを、後世の記録として、裁判という形で残したかった」と語っていた辛氏。そういう意味では、DHCテレビジョンのデマを認めた今回の判決は、その思いがある程度実現したものといえるだろう。
ただし、辛氏は判決で、長谷川に対する請求が認められなかったことについては、こうコメントしている。
「DHCテレビジョンは問題があると断罪され、司会進行として扇動し続けた長谷川幸洋氏(当時、東京新聞論説副主幹)は不問とされました。
記者会見で、木村元彦さんから「勝てる闘いと記録に残す闘いの違いは?」と問われました。そのときはきちんと応えられませんでしたが、どうして長谷川氏を訴えたのか、の問いだったように思います。
すでに、BPOでは結果も出ていて、DHCテレビジョンとの闘いは社会的には決着がついていたと言えます。裁判での勝ちだけを考えたら、DHCテレビジョンだけ訴えればよかった話だと思います。
しかし、それでは長谷川氏の問題性、日本社会で一度も問われたことのないこの問題が、そのまま放置されてしまいます。
沖縄に対する差別偏見を剥き出しにした番組を作ることも悪いが、それに信頼性をつけて広める人間もそれに負けず劣らず問題です。
長谷川氏は、1月2日の番組の中で見事に番組の指揮者の役をやり、差別と偏見に満ちた番組をまとめ上げたのです。そして翌週の番組でも、前週の番組を批判する声に対して冷笑するような態度を取り、私たちの傷を深めました。
しかも長谷川氏は、「東京新聞・中日新聞論説副主幹」という肩書でこの番組の司会をしています。
これは、長谷川氏の発する情報には信頼性があるのだということをあたかも糊塗するようなものであり、こういう肩書で差別と偏見がまき散らされたことに、私たちは耐えがたい思いを抱きました。
長谷川氏の行いは、人が生きる社会として、必ず、その問題性を問われなければならない、許されないものだと私は思います。
すべての虐殺は、デマの発信と、それに信憑性を付けて拡散する人間によって、始まるからです」
また、DHCテレビジョンが控訴を表明したことについては、こう語った。
「この裁判は、カルトとの闘いだと私は思っています。常識では、考えてはいけない。彼らは、一審は勝ったと吹聴しているのをみれば、何を問われているのかさえわからないのです。DV男の逆切れ、といったほうがいいでしょうか。おそらく、最高裁で判決が出ても、彼らの思考と行動は変わらないでしょう」
たしかに、裁判を起こしても、最高裁で敗訴判決を受けても、DHCテレビジョンに象徴されるようなヘイト勢力はなんの反省しないだろう。しかし、少なくとも、社会に対して、彼らの悪質なデマ拡散の手法を知らしめることはできる。そういう意味でも、辛淑玉氏の闘いに今後も注目したい。
(編集部)
最終更新:2021.09.12 05:41