政府インターネットテレビより
菅義偉首相が最後に党利党略のための政策を打ち出した。本日、菅首相は緊急事態宣言の延長などを決めたが、一方で政府は制限緩和の基本方針を決定。10〜11月にはワクチン接種証明や検査の陰性証明を活用し飲食や旅行などで制限を緩和していく方針を明らかにした。
当初の政府による行程表(ロードマップ)原案では、10〜11月には緊急事態宣言下でも飲食店での酒の提供を可とし、会食の人数制限の緩和・撤廃や「GoToトラベル」の再開検討などが盛り込まれていたという。この原案に対し、松本哲哉・国際医療福祉大学主任教授は「正直言って、腹立たしい思いです。これだけ感染症が深刻な状況のなかで、なぜこういう楽観的な議論ができるのか」「いかにも選挙を意識したような楽観的な内容」(9月3日放送テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』)と批判していたが、まさにそのとおりだろう。
実際、制限緩和策は菅首相が総裁選や総選挙において自身のPRに使おうとしていた切り札のひとつだったはずだ。菅首相が失脚したいま、この緩和策は総選挙において自民党の宣伝に使われることは必至。事実、この制限緩和が本格的に実施されるのは11月と見られており、11月にずれ込む可能性が高くなっている衆院選と重なる。
「コロナ対策に専念する」と言いながら、肝心の医療提供体制の強化などは置き去りにしたまま、制限緩和策で歓心を買う──。だが、コロナ対策を放り出しているのは菅首相だけではなく、総裁選候補者たちも同じだ。
たとえば、自民党の岸田文雄・前政調会長は、2日におこなった総裁選に向けたコロナ対策の政策発表のなかで「国主導による臨時の医療施設の開設」や「無料のPCR検査の拡充」などを打ち出した。これらはいますぐ着手すべき課題であることは間違いなく、岸田氏は、ちんたら会見をやっている暇があるのなら、すぐに提言をまとめて菅首相に上げるべきではないか。
また、岸田氏はこの政策発表で菅首相が打ち切った「家賃支援給付金」や「持続化給付金」の復活を掲げたが、すでに今年3月に立憲民主党と日本共産党が両給付金の再給付を盛り込んだ予算案の組み換え案を国会に共同提出。それを反対して否決に持ち込んだのは自民党だ。しかも、否決されたあとにも野党両党は「持続化給付金再支給法案」など支援のための法案を国会に提出済み。コロナ対策を重要視するというのであれば、岸田氏は臨時国会の招集を要求した上で、これらの野党提出法案を可決させるべきだろう。
ところが、こうしてすぐに国会で対応できるコロナ対策を自民党は店晒しにしつづけた挙げ句、総裁選の公約として政争の具にしようというのである。ふざけるのもいい加減にしろ、という話だ。