だが、問題は国民をどこまでも蔑ろにする菅首相の姿勢だけではない。最大の問題は、このコロナ禍に国民を蔑ろにしつづける菅首相の姿勢を徹底批判することもなく、自民党の政局に丸乗りして大々的に報じるメディアの態度だ。
実際、報道番組もワイドショーもこの間、「急展開 菅総理 二階幹事長交代へ」「解散する?しない?総理“本音”は」「総裁選先送り? 岸田氏けん制 どうなる?衆院解散・総裁選」などとコロナ対策を置き去りにしていることへの批判もそっちのけで自民党の党内政局報道に終始。
なかでも、連日のように田崎史郎氏を出演させて党内政局の話題を熱心に取り上げている『ひるおび!』(TBS)の場合、昨日1日の放送では「目まぐるしく動く永田町」「総選挙を取り仕切る幹事長は誰に?」などと政局一色で、さらに本日2日放送では、総裁選の告示もまだされていないというのに、出馬に意欲を示している岸田文雄氏と高市早苗氏を生出演させる始末。菅首相による「総裁選先送りのための9月解散」説についても、「最近の菅首相は予測不能」「菅総理は闘争モードに入った」などと大はしゃぎで伝えた。
無論、これは『ひるおび!』にかぎったことではない。ほとんどの番組が菅首相の一挙手一投足をはじめ、自民党内の権力闘争にすぎない話題を無批判に垂れ流しつづけている。ようするに、まだ総裁選前だというのに、すでに自民党による「メディアジャック」がはじまっているのだ。
そもそも総裁選報道をめぐっては、自民党だけがクローズアップされるため、国政選挙の“事前運動”になりかねないものだとして批判されてきた。だが、2005年の総裁選でメディアが異常な熱狂ぶりで「小泉劇場」を垂れ流してテレビも新聞もたんなる自民党のPR機関と化したことに味をしめた自民党は、総裁選でメディアジャックをおこない、国政選挙の事前運動として利用してきた。
ようするに、菅首相によるここ最近の動きはメディアジャックを狙ったものでもあり、当のメディア側も、過去の反省もなくまんまとそれに乗っかっているのである。
しかも、今回、メディア側の罪がとりわけ深いのは、菅首相がコロナ対策を放り出して権力闘争に明け暮れていることを正面から批判しようとしていないことだ。
そのことを象徴するのが、野党4党が要求した臨時国会の招集を、政府・与党が拒否した問題だ。