実際、6月30日におこなわれた野党の合同会合では、出席した内閣官房のオリパラ推進本部事務局担当者に対して“オリパラの選手らに多数の感染者が出た場合、東京都民の病床が不足して医療が逼迫するのではないか”という質問がなされたが、これに対する回答は「仮に選手から陽性者が発生した場合でも、ほとんどは無症状、あるいは軽症であることが想定されている」というもの。その上、「濃厚接触者は試合に出られるのか」という質問には、こう言い放ったという。
「本来、濃厚接触者は検査結果が陰性でも自宅待機するルールだが、五輪は4年に1度だ。14日間隔離すると試合に出られなくなることもあるため、関係者で調整している」
濃厚接触者も試合に出られる、というのだ。最悪のケースを想定して対策をとるのが危機管理だが、「五輪は4年に1度」という理由で隔離を免除するって、そんなことをすればバブル内で感染拡大が起こりかねない。滅茶苦茶ではないか。
さらに、「無症状か軽症だから都民の医療を逼迫しない」などというのも楽観的にも程がある。しかも、組織委の橋本聖子会長は、大会指定病院について「都内の9病院からおおむね内諾をいただいた」と語っていたが、6月30日放送の『報道1930』(BS-TBS)の取材に対し東京都は「3つの都立病院が候補になっている」とし、その3つの病院に同番組が直接確認したところ、2つの病院が「正式な打診はない」と回答。つまり、いまだに病院の確保はあやふやな状態にあるのだ。こんな体たらくであるにもかかわらず、内閣官房や組織委は「都民の医療を逼迫しない」と断言しているのである。その言葉を信用しろというほうがどうかしている。
このほかにも、選手以外の「ぼったくり男爵」をはじめとする大会関係者約5万人に対して入国後14日以内でも条件付きで個室レストランの利用を認めるなど、むしろ率先して東京五輪を一大クラスターイベントにしようとしているとしか考えられないような施策を打ち出している。こうしたいい加減な対策や説明からしても、はっきり言って「安全安心」の大会開催など政府や組織委には不可能であることは明々白々だ。
そもそも運営能力が著しく欠如しているとしか思えない場当たり対応を連発し、その上、極度の隠蔽体質を持つ政府と組織委が、緊急事態宣言レベルのなかで3週間後には五輪を開催する。そして、その生贄とされるのは私たち市民だ。この恐怖と不条理に、黙っているわけにはいかないだろう。繰り返す。東京五輪は「中止」の一択しかない。
(水井多賀子)
最終更新:2021.07.02 09:51