つまり、ワクチン接種が進む欧米各国に対して、ワクチン接種が遅れ、変異株が猛威をふるっている日本では、これからまだ感染者数も死者数も増加していく途上にあることさえうかがえるのに、高橋氏はその実情を無視し、主張しているのである。
「さざ波」という表現についても、前述したように高橋氏は「木村(盛世・元厚労省医系技官)さんが言ったこと」などと権威づけをおこないつつ他人のせいにしていたが、そもそも、木村氏自体が“コロナは風邪”“たいしたことない病気”であるかのような非常に偏った主張をしてきた人物。この間、「季節性インフルエンザと同じ5類扱いに見直すべき」「自粛や規制をやめ集団免疫の獲得を目指すべき」「GoTo止めるのは本末転倒」「マスクの感染防止効果にエビデンスない」などと、コロナを矮小化するトンデモな主張を展開し続けてきた。そんな人物が使っている言葉を使ったといっても、客観性の証明にもなんにもならないだろう。
さらに、あ然とさせられたのが、「笑笑」を「こんな感染状況で五輪を中止したら、世界で笑われるという意味」だったとした言い訳だ。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト」など、むしろ多くの海外メディアが東京五輪中止を主張し、強行する日本に呆れた論調の報道をしているのに、一体何を言っているのか。
とにかく高橋氏の言い訳にはなんの説得力もないのだが、しかし、驚いたことに、こんな人物のトンデモ発言を擁護する輩が多数現れている。なかでも目立っているのが、ワイドショーのコメンテーターをつとめるお笑い芸人たちだ。
たとえば、東野幸治はツイッターでこうつぶやいて、炎上した。
〈次はさざ波問題か。コレ以前から言ってた事なのになぁ。さざ波なのにひっ迫してるのが問題ですって。T先生が叩かれていて、ZやNHKやマスゴミの人達は喜んでるだろうなぁ。〉
東野といえば、高橋氏がコメンテーターを務める『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)でMCを務めている。
訳知り顔で“さざ波なんて以前から言ってた”とつぶやいたのは、この『正義のミカタ』に、「さざ波」の言い出しっぺである前出の木村盛世氏も度々出演しているからだろう。しかし、高橋氏は医療が逼迫していることを問題にするために「さざ波」と言ったのではなく、感染が大したことがないという文脈で使っているのは明らか。それを無理やり擁護して、「ZやNHKやマスゴミの人達は喜んでるだろうなぁ」とネトウヨ陰謀論丸出しの台詞を口にするとは、呆れるしかない。