そもそも、山田内閣広報官は「イベントやプロジェクトに誘われたら絶対に断らない。飲み会も断らない。断る人は二度と誘われない。出会うチャンスを愚直に広げてほしい」などと発言していたことも問題になっているが、この発言自体、家事や子育てを押し付けられながら仕事を抱える女性たちが男社会の組織内で「飲み会に参加しない」などという理由で阻害されてきたことをまったく理解しない、あ然とするようなものだ。しかし、こうした「わきまえた女」だからこそ、菅首相は山田氏を高く評価してきたのだろう。
だが、菅首相が山田氏を身びいきし、これほどの問題が発覚しても何の処分も下さなかった理由は、そこではない。山田氏が“自分にとって忠実な右腕”だからだ。
山田内閣広報官は、菅首相が出演したNHKの『ニュースウオッチ9』で有馬嘉男キャスターが食い下がって質問したことに対し、放送の翌日、原聖樹・NHK政治部長に電話口で「総理、怒っていますよ」「あんなに突っ込むなんて、事前の打ち合わせと違う。どうかと思います」などと“恫喝”をかけたと言われ、有馬キャスターを降板に追い込んだ張本人と目されている。この“働きぶり”は安倍政権時にメディアに圧力をかけまくっていた菅首相そのものだ。
しかも、山田氏の忠臣ぶりは、菅首相の長男・正剛氏の問題でもうかがえる。正剛氏は東北新社で部長職にあるだけではなく同社の子会社であるCS局「囲碁・将棋チャンネル」を運営する株式会社囲碁将棋チャンネルの取締役も兼任しており、その「囲碁将棋チャンネル」の番組はハイビジョンではない標準テレビジョンであるにもかかわらず2018年に「東経110度CS放送に係る衛星基幹放送の業務認定」を総務省から受けているが、この認定を判断する最高責任者の総務省情報流通行政局長の職にあったのは山田氏だからだ。
時に官僚として長男の事業を特別待遇し、時に内閣広報官としてメディアに恫喝をかけて睨みをきかせる。つまり、こうした忠義者を菅首相はそばに置いておきたいために不問に付し、批判を封じ込めるために山田氏を「女性」であることを強調したのである。
しかも、菅首相はきょう、緊急事態宣言の先行解除にともなって明日26日に予定していた会見を中止し見送ったという。前述したように山田内閣広報官は総理会見の司会進行役であり、渦中の人物が司会進行をおこなうことでさらなる非難を浴びることになるのを避けたのだろうが、そもそもそんな人物にいまだ内閣広報官をやらせていること自体が問題なのだ。いずれにしても、こんなやり方で幕引きをさせてはならない。
(編集部)
最終更新:2021.02.26 12:01