報道番組やワイドショーでも「いよいよオリンピックイヤー」というセリフが連呼され、オリンピック礼賛一色。東京五輪をめぐっては、誘致から開催準備まであれだけさまざまな問題、批判が噴出していたのに、誰もそのことは口にしなくなった。
日本のメディアの翼賛体質には改めて辟易させられるが、なかでもひどかったのが、2019年12月28日に放送された『ワイドナショー 年末スペシャル2019』(フジテレビ)だ。なんと、東京五輪組織委員会会長で、一連の五輪不正、トラブルの元凶といわれてきた森喜朗元首相をゲスト出演させ、大ヨイショ番組を展開したのだ。
登場からしてすごかった。コーナーが始まる前、東野幸治が「本日はすごい方が来て下さいました。森喜朗さんでございます」とうやうやしく紹介すると、出演者がわざわざ起立し、森をお出迎え。松本人志にいたっては、森から「あなたが誘ってくれて」と声をかけられ手を差し出されると、森と両手で握手する始末だった。松本といえば、以前、安倍首相が登場した時も普段の態度からは考えられない媚びへつらいを見せて失笑を買ったが、今回もそのときとそっくり。とにかくこの芸人、権力者にはめっきり弱いらしい。
この気持ちの悪い媚びへつらいはトークが始まるとさらに露骨になった。森のことをラグビーW杯を成功させた立役者と持ち上げ、森に自慢話を語らせるための質問を連発しはじめたのだ。
たとえば、東野が「日本で開催されたワールドカップここまで盛り上がると思いましたか?」と質問したときのこと。森が自信満々に「思いましたよ」と答えると、東野が自分たちは盛り上がると思ってなかったと反省のコメント、松本も「もうしわけない」と大げさに謝罪して、森の「先見の明」を讃える空気をつくりだ。
ゲストのロンブー淳もこの流れに乗っかって森のことを持ち上げまくっていた。番組ロケで自民党総裁室に入ったときの話を持ち出し、「歴代の総裁の方が写真飾ってあるでしょう。スーツで皆さんビシッと写真にうつられてるんですけど、森さんだけラグビーのユニフォームで」「本当にラグビー好きなんだなと思って。総裁になったときに、自分の好きなスポーツのユニフォームでうつります?」などとみえみえのご機嫌とり。
そして、こうした質問を受けて、森がラグビー自慢話を語り始めるのだが、意味が不明瞭だったり、話題がずれたりで、面白くもなんともない。しかし、一同はなんのつっこみもせずひたすら感心して見せ、サムい冗談におおげさに爆笑し続けた。
そんななか、空気を読まない古市憲寿だけは話を振られても「僕は(ラグビー)見てないんで」と冷ややかだったが(ちなみに古市だけは森が登場した時も起立していなかった)、このときも、松本は古市を指さして、森に「こんなやつがいるんですよ!」とご注進するなど、必死で笑いにかえてフォローしていた。