菅首相といえば「医療壊滅」一歩手前と叫ばれていた1月16日に、〈「ほぼ通常社会活動再開」を実行しても日本で死者数が増えない〉といまだに主張するような感染症の専門家でもない大木隆生・東京慈恵会医科大学教授と45分間も面会。「久しぶりに明るい話を聞いた」などと感想を口にしたと言われている。
「この私が話を聞いた」という傲慢な言い方は気になるが、危機的状況にあっても自分にとって耳障りのいい話をする人物と面会していたことを考えれば、困窮している人たちと直接会ってその声を聞くという態度の変化は、評価すべきものだろう。
「GoTo」強行にはじまり、菅首相が批判の声を一切無視してコロナ対策や必要な支援をなおざりにしてきたことはこの程度で帳消しになるものではないが、それでも、この姿勢の変化は、これまでの政策や態度を反省し、国民の声を受け止めようとしていることなのか……。底意地が悪いと思われているだろう本サイトでさえ、これはわずかながらも光明が見えてきたかもと、ほんの少し期待していた。
しかし、そのわずかな期待は見事に裏切られた。
というのも、昨日1日におこなわれた衆院内閣委員会では、立憲の山井和則衆院議員が、シングルマザーや非正規労働者から要望された大企業非正規労働者を休業支援金の対象にすることについて「菅首相から指示はあったか」と質問。すると、厚労省側はこう答弁したのである。
「厚労省としては、大企業の労働者の方々について、雇用調整助成金の特例を活用いただけるよう企業に対し引きつづきていねいに働きかけをおこなっていきたいと考えている」
要望されていたのは休業支援金の対象にすることだったのに、なんと以前と何ひとつ変わっていない「ゼロ回答」だったのだ。
これには山井議員が「総理から大企業への休業支援金の対象拡大について、指示は金曜日以降あったんですか、なかったんですか?」と重ねて質問したのだが、これに対して厚労省側の返答はこんなものだった。
「個別の指示はないというふうに認識している」