現在の感染拡大の状況から考えても、とりわけ中小・零細企業が大打撃を受けることは必至で、春以降の手厚い支援が必要なのははっきりとしている。にもかかわらず、菅首相は倒産・廃業や解雇、雇い止めを止めるための支援策を打ち出そうとはしないのだ。
しかも、これはたんに菅首相が支援をケチっているというような問題ではない。むしろ、支援を打ち切って中小企業の淘汰をおこなうことこそが菅首相の狙いなのだ。
現に「持続化給付金」は、10月26日に開かれた財政制度等審議会の歳出改革部会で「事業が振るわない企業の長い延命に懸念する」「人材の流動化やM&A(合併・買収)が阻害され、経済成長につながらない」などという意見が噴出し、予定通り来年1月までで終了すべきという意見が大勢を占めたといい(日本経済新聞10月26日付)、会合後に部会長代理である土居丈朗・慶應義塾大学教授もこう述べていた。
「期限をずるずると先延ばしすると、本来はよりよく新陳代謝が促される機会が奪われてしまう」
新型コロナという未曾有の“災害”の影響を受け、生活苦や先行き不安で自殺者が増加するなかで、その国民の生活を守るための支援策を「新陳代謝が促される機会が奪われてしまう」と口にする──。土居教授といえば、政府税制調査会でも、コロナによる景気悪化のために減税措置をとるべきという意見が高まるなかで「消費減税をすることによって格差拡大を助長するということをまず国民にしっかりと訴えるべき」などというトンデモ発言をおこなった人物だが、この「新陳代謝」発言にも新自由主義的な弱者切り捨ての思想がありありと見える。
だが、この財政制度等審議会による「持続化給付金」打ち切りの提言を政府が採用するかどうかは「不透明」だとされていた。“来年に衆院選を控えるなかで打ち切りは困難”というのがその理由だ(「日経ビジネス」11月9日号)。
しかし、菅首相はこの提言を受け入れ、「持続化給付金」打ち切りを決めた。菅首相は政権維持のため衆院選に神経を尖らせていると言われているが、その衆院選に悪影響をおよぼしかねないにもかかわらず、だ。