菅首相の「経済優先」が本質的なものではないことを象徴するのは、感染防止と経済を守るためには必須である、休業要請に応じた店舗への補償に対する姿勢でも同様だ。
第2波の段階から、全国知事会や東京都医師会の尾﨑治夫会長からは「休業補償をちゃんとつけた法的拘束力のある休業要請」が出せるよう、特措法を改正するよう要望が出されてきた。これは当然の訴えで、そうでなければ自治体の財政状況によって補償なしの休業要請となり、そもそも効果が見込めなくなるからだ。
しかし、安倍政権はこの要求を無視しつづけ、菅政権もそれを継承。立憲民主党や日本共産党などの野党4党は特措法改正案を国会に提出し、臨時国会の会期延長を要請したが、自民・公明の与党と日本維新の会が反対してこれを否決した。
特措法改正案の審議もせずに国会を閉会させたことからも菅政権の無責任さが表れているが、しかし、信じられないことに国会を閉じた途端、菅首相は会見で「必要な見直しは迅速におこなっていきたい」と言及。西村康稔・経済再生担当相も「法律上どう位置づけるかを含め、よりよい制度となるよう作業を加速したい」(6日放送『日曜討論』)と言い出したのだ。
あまりにも遅すぎる上に、閉会したあとで「見直し」を言い出す──。ようするに、コロナ対策よりも「これ以上、追及を受けたくない」「国会を早く閉じたい」という私利私欲を優先させたのである。
「感染防止か経済か」という誤った二者択一を脅迫的に国民に迫ることで肝いりの「GoTo」を正当化し、逼迫した医療現場では「命の選別」さえおこなわれかねない状況にまで追い込まれているというのに、専門家の意見も気にかけない。安倍前首相のコロナ対応は「後手後手」と批判を浴びたが、菅首相のコロナ対応は「後手後手」を超えて「意図的な不作為による国民の見殺し」ではないか。
このような菅首相の実態が明らかになっているというのに、それでも内閣支持率は50%を超えているという現状。その事実こそが恐ろしいというほかないだろう。
(編集部)
最終更新:2020.12.07 08:01