しかも、開いた口が塞がらなかったのは、こんな話まではじめたことだった。
「2年前に、携帯電話については4割は下げられると講演で申し上げました」
「今回、大手のうちの1社が大容量プランについて20ギガで2980円という料金プランをメインブランドのなかで実現するとの発表がありました。本格的な競争に向けてひとつの節目を迎えたと思います」
そう。菅首相は昨日ドコモが発表した新プランをわざわざ取り上げ、民間企業による値下げを自分の功績であるかのようにアピールしたのだ。
そして、野党から要求されてきた支援策や民間サービスの値下げといった人の褌で相撲を取っておきながら、「菅内閣において重要なのは、変化に対応するスピードと国民目線の改革です」と強調したのである。
「GoTo」に固執しつづけているせいで混乱を生み、感染拡大阻止のための具体的な政策も打ち出さず、「変化に対応するスピードと国民目線の改革」と言い切る鉄面皮……。そもそも、今回の会見は前述したように国会閉会にあわせておこなわれたものであって、新型コロナ感染拡大についての会見ではない。つまり、菅首相は総理大臣に就任して以来、一度たりとも新型コロナ対応について特化して国民に説明をおこなうという正式な機会を設けてはいないのだ。だが、それも必然だということが今日ははっきりとした。医療現場からいくら悲鳴があがり、「医療崩壊」が現実的になっても、感染拡大を阻止しようという気がこの男にはまるでないのだ。
このあまりにもひどすぎる態度には絶句するほかないが、しかし、本当に言葉を失ったのは、会見の質疑応答だった。
当然、本人が語らずとも、菅首相の無責任さを追及する質問が飛び交うに違いない。そう考えていたのだが、幹事社であるTBSと毎日新聞が「GoTo」対応や特措法改正の考え、学術会議問題、安倍前首相の「前夜祭」問題といった厳しめの質問をおこなって以降は、「いま、その質問!?」とツッコまずにはいられない話題がつづいていったのだ。