菅首相はこうした状況を目の当たりにしても、科学者や医療関係者の声、そして「医療崩壊」一歩手前であることを示す数字といった「エビデンス」を突きつけられても、いまだ無視しているのである。これは国民を殺しにかかっているようなものではないか。
実際、分科会は20日に「私たちの考え」と題する提言で〈人の動きというのが感染の状況に影響する一つの重要な要素〉と指摘し、菅首相は21日に渋々「『GoTo』見直し」を口にしたが、その舞台裏で何があったかを「週刊文春」(文藝春秋)12月3日号が報道。そのなかで分科会メンバーの経済学者・小林慶一郎氏は、このときは通常はおこなわれる官僚の事前レクもなく、前日には分科会メンバーに届くはずの提言の文案も会議直前まで届かなかったとし、「尾身会長も文案を“骨抜き”にされる時間を官邸に与えないよう、水面下で一気に事を進めたのだろうと思います」と語っている。
分科会の提言に介入して骨抜きにしようとすることも酷いが、しかし、この分科会の提言に菅首相は苛立ちを隠さず、側近たちの前でこう言い放ったという。
「なんでそんなことを言うんだ。専門家なのに、エビデンスがない。だいたい(スーパーコンピューターの)富岳の計算でもマスクをつければ大丈夫なんだ」
「マスクをつければ大丈夫」って、「GoTo」利用者が24時間どうマスクを着用できているのか、そのエビデンスもないのに何を言っているのだか。菅首相といえば、11月18日に国内の1日の新規感染者数が2000人をはじめて超えた翌朝19日、ぶら下がり取材で「静かなマスク会食」という噴飯ものの呼びかけをおこない、記者から飛び出した「GoTo」見直しの質問も無視して立ち去ったが、「週刊文春」によると〈「マスク」と「会食」という二つの単語を繋げたのは首相自らのアイデアで、「キャッチーだ」と自賛していたという〉から呆れてものも言えない。